飛龍伝


つかこうへい作・演出の「飛龍伝」@大阪厚生年金会館芸術ホールを観てきました。(12/12)
実はつか作品初体験です。ツヨシファンのくせに「蒲田行進曲」も観てないですしね。



以下、多少ネタバレもあるのでご注意ください。



1970年、東京。
日米安保条約反対に燃える学生たちは、その運動を束ねる委員長として、東大の秀才にして四国の財閥の娘・神林美智子(広末涼子)をまつりあげる。
闘争が激化する中、第四機動隊の若き隊長・山崎一平(筧利夫)は美智子の凛々しい姿にすっかり一目惚れ。
美智子も山崎からの強引なアプローチに胸をときめかせていた。
作戦参謀・桂木順一郎(春田純一)の婚約者でもある美智子は、恋人の窮地を救う為、山崎のアパートに潜入して11・26決戦の日の機動隊配置図を盗み出す事で取引をする。
二人は次第に心から愛し合うようになるが、決戦の日は容赦なく近づいてきていた………


まず、テーマは重いのにけっこう歌やダンスが挟まってるんですね。しかも古い感じの(笑)。
で、筧さんのダンスのキレが素晴らしかった。
一瞬一瞬きちりとキメて止まるんですよ。本当かっこよくって、踊ってる間はずっと筧さん見てました。かっこいい。
広末のそれとは、男女の差もあるけどやっぱ違う気がしました。舞台人の動きというか。
あと、戦闘シーンのあのドラゴンボールみたいな投げ飛ばしのキメポーズもかっこいい。

筧さんはバラエティに出るとちょっと張りきり過ぎてウザイ(失礼)感が目立ちますが、さすが舞台だとその濃さが良い具合に輝きます。
言葉も早口なのに聞き取りやすくて、飛龍伝中、一番無理なく入っていけた役柄でした。プロだなあ。
例えばテレビでは、フードファイトのヤブ医者は過剰にインチキ臭い・舞台役者臭いですし、映画では踊る大捜査線の新城管理官はあれだけ抑え気味でやっとブラウン管内の他の役者さんとイーブン、という印象でした。
今回の飛龍伝でかなり見直したかもしれないです。



広末はカーテンコールで着てた黒のラメ入りミニワンピが可憐で可憐で。
ライトで光るおみあしとかむき出しの丸い肩とか、腕鎖骨なにもかも可愛かった。
本編はずっとねずみ色のジャージなんで、なんであれをミニスカに…せめて膝下スカートにしてくれなかったんだろうかとつかさんを恨む。
けど、筧さんが内股に手を差し入れて足開かせたりだとか、セックス描写で上に馬乗りになって腰グラインド(でも遠慮気味)させたりだとか、胸つかんだりとか(これマジで驚きました)、けっこうきわどいエロ描写があったのでスカートじゃ無理だったかもしれない。

それにしてもあれだけのエロワードを広末に言わせたってのが、凄い価値あることだなあと。
「メスよ!私は薄汚いメス猫なんだわー!」とか「イッた…」とか。
これ、広末ファンの男性にはウケはどうだったのでしょう。私はつかさんに言わされてる感の溢れる広末にけっこう萌えでしたけど。
どうでもいいけど私の前に着席していた推定広末ファンの男性、広末と筧さんがブッチューと長ーいキスをして会場が笑いに包まれてる隙に、「いいなああ〜〜」と本気の呟きを吐くのはやめてください。




劇全体に関して。
正直、前半セリフが聞き取りにくかったです。
安保にも詳しくないし、前もって勉強も怠って行ったので本当何言ってるかわかんない。話の筋は見てたら何となくわかりましたが。
当然ギャグにも笑えず。隣のひとは何度か来ているらしくわかってて笑ってるのに、私は今の何が面白いのかわかんなくてかなしかったです。
筧さんと、声の良く通る広末だけはさすがにきっちり聞こえて有り難かった。



一番笑ったのは、
一平が冷蔵庫を引きずって一日ずつ美智子に近付いて、あと一日だったのに〜!ってとこ。
もはやあそこまでバカキャラだと心地良い。


一番泣いたのは、
伊豆沼さんでしたっけ?奥さんが死んじゃって、その奥さんが憧れてた委員長のためにつくった戦闘服を着て11.26決戦に来てくれというシーン。
いかにもーって場面とセリフなんだけど、ああこれだけ周りが激動に変わっていってて、どんどん仲間に犠牲者が出て、もう美智子は引き返せないんだなあと思ったら泣けてきた。
好きな人に向ける「自分の思い」と、それ以外のたくさんの人が「自分に向けてくる思い」。
どんなに自分がもう闘争は無意味だと思っていても、引けないことってある。
犠牲の前に、自分だけは逃げるなんて言えない、それは本当に潔い正しいことなのか、っていうのは今の時代疑問に思うことだけど。



一番わかんなかったのは、
美智子が色んな男に惚れすぎってとこ。
初めはネズミに処女あげて、次はそのネズミをズタボロにした桂木と婚約して、で、結局その間にも一平ちゃんに惹かれてるわけだし。
ああでも、桂木と初めに議論で対等にやりあったり、実は財閥の正当な娘じゃなくて苦労してて日本を変えようと東京に出てきていたんだ、っていう伏線からすると、初めの二人は利用しただけなのか。




語られる凄惨なエピソードはどれも怖いくらい印象的でした。
私が生きていない時代のこと。でも私が生まれるほんの数十年前のこと。
やってらんねえよ!って言って死んでいったお母さんたちとか。
生活保護受けてるようなヤツから給食費受け取れない」と教師に言われて日本を変えたいと思った桂木とか。
そんな桂木を庇って教師を殴ろうとした自分を「我慢しろ」って笑って諌めた桂木に惚れた一平とか。
桂木を信じてデモについていった妹が国会前を何時間も髪つかまれて引きまわされて死んだとか。
今の日本の学生では考えられないですからね。戦争の遠い(と思っている)国。


なんにせよ、見れて良かったですよ飛龍伝。