新選組！ #32 山南脱走

才覚はあるけれども爪が甘い。甲子太郎（呼び捨て）が指摘した、それが三谷幸喜大河における山南敬介で。自分で道を拓くのではなく、参謀として誰かに託してしまうというところに彼の限界を見る。江戸からは近藤勇に、今回はほんの少しなんでか坂本龍馬に、自分の求める夢の実現を託し、力の及ばなさに絶望していた。随分前からわかっていたことだけれど、確実な死亡フラグが立ってしまって本当にかなしい。誰にも、自分の弱いところ、自分の本当の心を晒してぶつかっていくことの出来ない山南さんを可哀相だと思った。新選組の他の人々はそれぞれ、曲りなりにも我が侭だもの（特に副長ね！/笑）。山南さんは見栄っぱりすぎるのだ。近藤局長を筆頭に、土方・武田・甲子太郎と参謀ばかり多過ぎる新選組でうまく立ち回れなかったのは、一重にその甘さのせいだと思う。
どうして、どいつもこいつも不器用で馬鹿なんだろうか新選組は！と思いながら見ていた。副長との関係性は、好きでもないけど嫌いでもない、だけど許せない、そういう線が両方向からギリギリの線で描かれていてとてもよかった。死を覚悟した眼。八木邸に戻ってきた近藤さんと言葉をかわす場面では、気付け！気付け！と念を送りながら泣いてしまった。気付くわけがない。そういうのに気付かない局長だから、新選組はこんなことになってしまってるのだし。人間は他人の覚悟までは見通せない、いつも泣くのは事が起きてしまったあとなんだなあ。
慎吾の、山南さんが脱走したかも？！と気付く瞬間の演技はとっても良かった。受けた衝撃の度合と呆然とする気持ちがヒシヒシと。お上の前で真の攘夷と見せかけた開国論を論じ始めたときにはええっ近藤勇が？とのけぞりましたけれども（笑）。脱走の追っ手、あそこで一ちゃん（もはやはじめちゃん呼ばわり）を行かせずに沖田を指名したのは、山南さんをできるなら見逃そうとした・もしくは説得しようとしたって解釈で良いんでしょうか。沖田なら完全なる身内でそれが可能だし秘密を守りやすい。
情に脆い山南が最後に、自分の命を賭して示そうとしたものを、来週は見届けたいと思います。永倉と原田に何を頼んだのかな？明里さんはどうなるのかな？やっぱり最後の最後に死を知らされるだけになるんだろうか。せつなすぎる…。そしてテレビ誌でちらっと見ただけの、かっちゃんとトシが身を寄せ合ってぼろぼろに泣き崩れ山南の死を嘆くシーン、あれを目にしたら私もう、きっと無事でいられないよ…（涙）。