隠し剣秋風抄/藤沢周平 ★★★★

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

さまざまな秘剣が登場する剣客小説の短編集。木村さんの映画「武士の一分」の原作の一編は最後の「盲目剣谺返し」。お上の毒見役をしていて当たった新之丞は視力を失う、暗闇に閉ざされる生活のなか妻が浮気していることに気付いて悶々とする、相手がわかって調べてみると妻が騙されていることがわかる、妻を不徳で追い出す、剣を磨く、妻を陥れた男と決着を着けに行く、そして…という凄くシンプルなストーリー。2時間弱の尺の邦画にはちょうどいいのかも。そしてこれなら木村さんをキャスティングでも納得、そういう爽やかさだった。前半の妻を疑って悶々とするところを是非ちゃんと演じて欲しい。後半の決意や決闘はお手のものな気がする。時代小説が苦手な私は盲目剣だけ流し読みして面白くなかったら閉じようと思ってたのに、そんな心配はいらずぐいぐい読め、他の短編も楽しく読んだ。きっぱりして、うつくしい文章。隠し剣鬼の爪も読んでみたい。

自分が忘れない用のあらすじメモ

  • 酒乱剣石割り <酒を断っての暗殺を命じられる
  • 汚名剣双燕 <3人男と1人の女 一人を斬り損ね一人を斬る
  • 女難剣雷切り <騙されて妻を娶る その愛人を
  • 陽狂剣かげろう <婚約者をお上へ
  • 偏屈剣蟇ノ舌 <派閥争いに巻き込まれた偏屈者 醜い嫁
  • 好色剣流水 <人の妻に懸想 決闘
  • 暗黒剣千鳥 <昔の仲間が次々と(土曜ワイド劇場? 暗殺者
  • 孤立剣残月 <復讐で狙われる けっこう情けない
  • 盲目剣谺返し <「武士の一分」という言葉は文中に出てきてました

どれがいちばん好きかとか考えると困る。印象に残った話は陽狂剣と好色剣、秘剣がかっこよかったのは双燕と蟇ノ舌(ヒキノシタ)かなあ。悲しい結末の方がなんとなくしっくりくる。盲目剣がラストなのは清涼で後味が良かった、だから初めから読んでった方が正解だったのにな<私はいきなりラストから読んだ人。