夜のピクニック/恩田陸

夜のピクニック

夜のピクニック

★★★★ 第二回本屋大賞。さすがに面白くて難しくもなくてすらすら読めた。これならどの年代にも層にも受け入れられるだろう。年一回、高校で開催される歩行祭の1日を書いたもの。朝学校を出発し、夜通し80キロの道を全校生徒で歩く、仮眠は夜中2時〜4時のわずかな時間だけで、前半は団体歩行(クラス毎)・後半は自由歩行という行事。実際に修学旅行の代わりにこれをやってる学校があるっていうのがすごい。高校三年生を思い出しながら楽しく読みました。
何よりキャラ萌えです。恩田せんせえには横山ひでお先生とともに「意外なキャラ萌え作家さん」の称号を差し上げます。物語自体も、主役の甲田貴子と西脇融(トオル)は丹念に描かれていてうまかった。たった1日の出来事を書いただけなのに二人の性格がよーくわかったし、最後の近づき方も理想的な按配。西脇融の性格描写にはキュンときたなあ、

女の子に興味がないわけではない。今がその時期でないだけで、むしろ、ひょっとして、この先自分が遊び人になるのではないかという予感がする。自惚れも含まれているかもしれないが、自分には女の子が寄ってくる、という確信があるのである。

だから、彼は用心していた。不定型な少女たちの記念品として扱われることのないように。彼女たちの卒業アルバムの思い出の一枚として収集されないように。

かっこよすぎだよこんな高校生のがきんちょ!(笑)
映画化も企画されてるらしい。http://www.yorupic.com/ ここんとこ活字と映像の関係が気になってていろいろ観たりしてるので、たのしみです。思うに長編小説を詰め込んで映像化する(「もほうはん」「いーじす」)よりも、短編小説を引き伸ばして付け足して拡大解釈・味つけして映像化する(「ジョゼ」「野ぶた」)方がうまくいってるような気がする。そっちのほうが原作への愛というかシンクロ率、伝えたいテーマが明確でなくちゃいけないから大変なんだろうけど。そういう意味で夜ピクはテーマも明確でわかりやすいし、尺的にもちょーどいい感じがする。あーでもあの文章でなくちゃつまんなくなっちゃうかなあ。