王国その2 〜痛み、失われたものの影、そして魔法/よしもとばなな

王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法

王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法

★★★★ 再読。ああやっぱり私、ばななの長編が好きだなあと思った(一番好きなばなな作品がアムリタってところからして)。新しい生活に馴染む、単にそれだけのことを一冊をまるまる使って丁寧に描く、長編だからこそ出来る書き方。前回読んだときはさほどいい印象ではなかった記憶があるのに、今読むと沁みる。私にとって、悩みがあったり落ち込んだり停滞してる時期に効くんだろうなあたぶん。あらすじメモ→ 楓と片岡さんがフィレンツェへ/サボテン枯れる/真一郎くん離婚/ノロケ気味/不安定/テレビにはまる/色々あって/居酒屋に行って少し大丈夫に/片岡さん一時帰国・和解・アシスタントの自覚/3人の関係/楓と片岡さんがマルタ島へ行きおばあちゃんと会う/もうすぐ楓が帰ってくる

ある種の都会的なやり方には、ものすごい悲しみもないけれど、当然の幸せもない。失う痛みをうまく取り除いた代わりに、痛すぎることから目をそむけていられるように、ぼんやりとさせられている。そんな感じがした。

なんにも大きな事件はないのに、大きな流れで雫石が新しい環境を受け入れる、その過程だけでこれだけもたす。おばあちゃんのメールがいちいち感動的ですてき。そしてこの流れでアシスタントとしてのやり方がメインテーマになってる王国3へ繋がっていくんだなあナルホド!こんなにラブラブだった真一郎くんと次巻であんなに酷くなってしまうってのが…長編ならでは!この王国シリーズがいつ完結するのか知らないけど、1冊にまとめて欲しい、是非。
って、ちょろっと検索したらすぐ出てきた。

物語は“その5”で完結する予定だという。
「“その4”と“その5”は、雫石たちの一つ下の世代の話です。2歳半の息子がもう少ししゃべれるようになって、考えていることを聞いたり、彼の友達を見たりしてから書きたいですね。みんなが忘れたころに(笑)。そんなに遠くない将来、出そうと思っています」
http://www.walkerplus.com/tokyo/20051206/bo1982_pkup.html

今はそういう時期だと思うのでずっと敬遠してた自選選集4冊を読もうと思う。