福音の少年/あさのあつこ ★★★

福音の少年

福音の少年

十六歳の永見明帆(男)は、同級生の藍子とつきあっていても冷えた感情を自覚するだけ。唯一、彼が心に留める存在は藍子と同じアパートに住む彼女の幼なじみ、柏木陽だった。永見が藍子と別れた日、母親とけんかした陽が突然泊めてくれ、と訪ねてくる。その夜半、陽のアパートが火事で全焼、藍子も焼死体で発見される。だが、それは単なる事故ではなかった。真相を探り始めた彼らに近づく、謎の存在。自分の心の奥底にある負の部分に搦め捕られそうになる、二人の少年。十代という若さにこそ存在する心の闇を昇華した、著者渾身の問題作。

文学的なボーイズラブ?と思ってしまうくらい、二人の少年がきれいに描かれてます。前半は直接の接点が薄く、ゆえにもうその青さと自意識の有り様に恥ずかしくなっちゃうくらいだったんですけど。だって二人にとっては自分の「彼女」と「幼馴染み」である女子を間に挟んで、実際は互いのことばかり気にしてるんだよ。ところどころにお互いに欲情を匂わせるようなあくまで文学的な表現もあったりして。中盤で彼女が火事で死に、二人が同居して、会話を交わすようになると妙な耽美感も薄らいでなかなか面白かったです。結局単なるBLじゃないとしたらどこに主題を置いていた本なのかよくわからなかったけど、「他人を大事に思えない、破壊衝動を抱いた孤独な少年二人が、人殺しの世界に誘われながらも互いを支えになんとか踏みとどまろうとする物語」なのかな。異常だけど病気ではない、という意味で「サイコパス(精神病質者)」の話なのかとも思った。タイトルの「福音の少年」はとにかく「声がいい」と描かれ続けている柏木陽のことを指しているのだろうか。ビジュアル的には、永見=若いそちまちくん、柏木=若いふくやまくん、で読んでBL好きとしては無理やり楽しみました。きれいすぎるのは苦手だ。