黄色いダイアモンド/木原音瀬
- 作者: 木原音瀬,門地かおり
- 出版社/メーカー: ビブロス
- 発売日: 2000/08
- メディア: 新書
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「あのさあ」
勇は邦彦の目を見つめた。
「俺、お前のこと好きになってる気がすんだよ。ずっと友達だったけどさ、それとはちょっと違う。なんかこうしてると胸が熱くなる。嬉しいんだ。これって恋だろ」
「さあ…」
「お前の嬉しそうな、笑ってる顔が見たいんだよ。けど今は金なくて何も買ってやれないしなあ。何かしてやりたいと思うけど、何していいかもわかんないんだよ」
「一つ、欲しいものがある」
「なんだよ」
「もう一度、好きだと言ってほしい」
(中略)
「弓子とお前ってあまり似てないけどさ、ひとつだけ一緒のとこがあるんだ」
「なに」
「一回も俺のこと、馬鹿だって言わなかった」
勇の性格造詣がいいよね。いそうだもん、ああいうひと。流されやすいしだらしなくってダメなんだけど、素直で、ある意味まっすぐで、悪気がないの。勇と邦彦の物語はいろんな示唆を含んでるようで、もっと読みたい感じ。特に二人がそういう関係になってからどう心を重ねていったのか、見たかったなあ。勇はちゃんと邦彦の気持ち、わかって…くれた、んだよね?だからあんなに落ち着いたんだと思いたい。「歯が痛い」はいきなり8年後、息子の俊一の境遇はいろいろと辛すぎたんですが、勇が学校にやってきていじめっこの母親に対峙するとこはよかった。あまりに堂々としていてすっきりした。感動的。それだけに、さいごがね……(まだ言う)。尻切れじゃなければ★4つ。イラストも不思議と合っていた。そういえばなんでタイトルは「歯が痛い」なんだろ。これは勇が、邦彦のとこに戻りたくてついた小さな嘘のセリフ。なんでタイトル=この章の主人公・俊一の言葉じゃないんだろ。んー。考え出すとキリがない。
走るのも泳ぐのも誰より早い勇は、幼い邦彦の憧れだった。貧しく、親からもきちんと教育されず、成長するにつれ世間からはみ出していく勇を、邦彦はなんとか真っ当な道に戻そうとする。しかしいつしか、その想い、執着は「恋」なのだと気づいてしまい…。