アムリタ(上)/吉本ばなな
- 作者: 吉本ばなな
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/09/30
- メディア: 文庫
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私は自分がまともだなんて少しも思っていない。
頭を打っていて記憶もあいまいだし、家庭も複雑だし、いろいろで、いつもその点が不安だった。
だから、私は生きていく意義、みたいなことばっかり考えていて、しかもそのことだけは他人と分かち合いたくない。そんなものは黙っていてもいつのまにか分かち合っているものだ。話し合ったりわかり合わなくていい。そんなことをするとダメになってしまう。大切なものが話しているはしから次々と消えてしまう。なくなってしまう。そして、輪郭しか残ってないのに安心してしまう。そういう気がする。
彼女は確かにとんちんかんな人だったが、いつも自分で決めた。自分で決める力が必要以上強い人だった。服も、髪型も、友達も、会社も、自分の好きなことや嫌いなことも。どんなささいなことでも。
それが積み重なって、後に真の「自信」といいフィールドをかたちづくるような気がしてならない。
その人がその人であることは、壊れて行く自由も含めてこんなにも美しい、人に決めてもらえることなんて何一つ本当じゃないんだな、としみじみ光るように生きる彼女を見ていて私はよく思った。