アムリタ(上)/吉本ばなな

アムリタ〈上〉 (新潮文庫)

アムリタ〈上〉 (新潮文庫)

再読中。メランコリアと4章くらいまで。やっぱり、すごく好き。ぐんぐん心に入ってくる。初読みは確か大学生んとき。今まで読んだことのない共感できる流れが書かれていて、今まで知らなかった表現がいっぱいあった。そしてそれは今も変わらない。10年経ってもこうだということは、アムリタは私にとって普遍的なものかもしれない。

 私は自分がまともだなんて少しも思っていない。
 頭を打っていて記憶もあいまいだし、家庭も複雑だし、いろいろで、いつもその点が不安だった。
 だから、私は生きていく意義、みたいなことばっかり考えていて、しかもそのことだけは他人と分かち合いたくない。そんなものは黙っていてもいつのまにか分かち合っているものだ。話し合ったりわかり合わなくていい。そんなことをするとダメになってしまう。大切なものが話しているはしから次々と消えてしまう。なくなってしまう。そして、輪郭しか残ってないのに安心してしまう。そういう気がする。

 彼女は確かにとんちんかんな人だったが、いつも自分で決めた。自分で決める力が必要以上強い人だった。服も、髪型も、友達も、会社も、自分の好きなことや嫌いなことも。どんなささいなことでも。
 それが積み重なって、後に真の「自信」といいフィールドをかたちづくるような気がしてならない。
 その人がその人であることは、壊れて行く自由も含めてこんなにも美しい、人に決めてもらえることなんて何一つ本当じゃないんだな、としみじみ光るように生きる彼女を見ていて私はよく思った。

文中に出てくる実在の本↓
美しい星 (新潮文庫) 流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)