ドラマCD「こころ」

こころ

こころ

こっちも全部聞きました。原作感想はこちら→http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080609#1213022614http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080613#1213363979
原作を読んだ限りで私はKを、無骨なでっかい人、とイメージしてたんですよ。それこそ草間さんの書かれる箱の中の喜多川みたいなタイプ。それが、たぶんこのCDをつくった人はKのイメージを違う感じで捉えたんだろうなあというのが石田彰さんをキャスティングしたことで如実にわかってなかなか興味深い音声化でした。こっちはこっちでアリだと思う(しかし脳内映像は桂@銀魂です)。Kは思い悩んだ末に自殺しちゃうくらいのカタブツなわけだもんね。話自体は、先生の遺書に書かれてた下宿時代のいきさつを芝居形式で追う部分が大半。しずのセリフとか人となりがかなりオリジナルで足されてました。原作を読んだときにはこの女のどこがいいのかまるっきりわかんなかったんだけど(だからこそお嬢さんを挟んで先生→Kへの対抗意識が色濃く読み取れた)、桑島さんの明るいかわいい声で聞くといいお嬢さんだなーと思える。それだけに、先生のふがいなさ・情けなさが際立つ。先生が自殺する場面まできっちり音源化されてるので、ひーえー!となりました。「しず、愛してる…」だけでも破壊力抜群なのに更なるショッキング。原作の切りつけるようなかっこいい文体は殺されてるけど、これはこれで面白かったです。速水さんがいい声なので飽きずに最後まで聴ける。先生はほんとにばかだなあ…騙しうってまで手に入れたなら例えKに死なれようとも高笑いしてお嬢さんと幸せに暮らすぐらいの気概を見せるべきだったんだ。それができないなら卑怯な手など使うべきではなかったんだ。後日談で「私」がちゃっかり教訓を生かして過ごしてるのには笑った。

商店の窓硝子に私の顔が映っていました。硝子に映った私の顔は、あれほど憎んだ叔父の顔に似ていました。
言おう。あいつに言おう。今からでも遅くない。あいつはきっと許してくれるはずだ。
しかし、人の心とは不確かなものです。大学まで行ってKの姿を見たとき、私の気持ちは再び萎えてしまったのです。
「あの…」
「やあ」
Kは会釈をすると、静かに歩いていきました。

【 出演 】速水奨(先生)、石田彰(K)、桑島法子(静)、三木眞一郎(吉岡)、宮野真守(私) 他