ヒトクイマジカル─殺戮奇術の匂宮兄妹/西尾維新 ★★★
戯言シリーズで読み抜けていた5タイトル目。今回スポットが当たるのはクビツリハイスクールからの姫ちゃん。匂宮兄妹と狐さんが初登場、あとはみいこさんが少々。そして玖渚がこわい、本当はいーたんの敵というか乗り越えるべきは玖渚なのかもしれないなーと。テーマは生と死、そして運命ってとこでしょうか。中盤で事件が起こったあとのテンションが最高潮に高かった。そりゃあ姫ちゃんが殺されたらああなるよね…姫ちゃん嫌いじゃない…。姫ちゃんがいーたんを好きだったってのは結局いーたん自身には認識されないままなんだろうか。それともわざと見ないようにしてるのかなあ。兄妹のトリックは、もうネコソギやらディクショナルやらで知ってしまってるので、そこはちょっと惜しいことしたかな、と思った。やっぱり順番通りに読むのがいいですね。
「(中略)だから、いーちゃんは何しても、何を思っても自由なんだよ。──でも、唯一つ」
玖渚の瞳が──
青から蒼へと、変質する。
より澄んで。
より純粋な。
「いーちゃんが私のものでなくなったらそのときは地球を破壊するよ。昔んときみたく、今度いーちゃんが私の前からいなくなるなら、そのときは、今度はもう駄目。いーちゃんが私のものじゃないんなら、私は誰も欲しくない。全部跡形もなく壊す。全部消し炭残らず殺す」
「……と。も」
「なーんて、えへへ、こんなこと、いうまでもなく分かってることだよね? いーちゃん、お利巧さんだもんねー」
にっかり笑う。
純真で、無邪気で、まるで無垢な──
それゆえに、傲慢で、妖しい、笑み。
ぼくは、頷く他にない。
自分が、この自分の身が、いったい誰の手の内にある存在なのか──痛いほどに、思い知らされる。(中略)
もう、どうでもいい。
世界は絶望的なんかじゃない。世界は絶望そのものだ。この世は地獄だ、それがどうした。望むな、されば奪われない。扉があれば引き返せ。泣くな、笑うな、意味がない。信じる者も信じない者も平等に救われない。
ならば。
停滞しろ。
沈殿しろ。
溺死しろ。
ぼくを、きみのものにしろ。