しんぼる(監督:松本人志) ★★★☆

 
松ちゃんの監督映画作品を観るのは初めてです(大日本人は未見)。なーんの予備知識も無しにたぶん酷い出来なのかなーと思いながら行ったからなのか(失礼)、これが案外面白かったんですよ!松ちゃんファンの旦那くんがつまんなかったって言ってたからどうなのかはわかんないんですけどね。以下あくまでわたし的勝手な解釈と感想。ネタバレ。



メキシコのとある町。妻子と父と暮らすプロレスラー“エスカルゴマン”は、いつもと変わらぬ朝を迎えていた。しかしその日、妻は彼の様子がいつもとは違うことを感じていた。それは今日の対戦相手が、若くて過激なレスラーだということだけでなく、何かが起こりそうな妙な胸騒ぎを感じていたからだった。一方、奇妙な水玉のパジャマを着た男は、目を覚ますと四方を白い壁に囲まれた部屋に閉じ込められていた。ここがどこなのか、どうして連れてこられたのか…。見当もつかないまま、とりあえず出口を探し始めた彼は、壁に“あるもの”を見つけ…!?

  • メキシコパートは、初っ端に出てくるカレン(エスカルゴマンの娘でシスター)の演技からしてもう駄目駄目だったのでないなーと思ったんですけど。真っ白い四角い部屋に突然連れてこられた男、という松ちゃんの一人芝居パートは爆笑はしないまでも先が気になる程度には好き。特に後半。シチュエーションコメディが好きってのもあるかも。
  • 一番おかしかったのは、調子にのって菜箸ちんこを連打したあとに出てきた台車でした。パンフ見たらあれがツカミ的なシークエンスだったらしくて納得。
  • 白い部屋での「修行」、これはもう見たままに「人生」なんだなと思って。ある日急に窮屈な四角い部屋に存在している、それは私たちが望むと望まざるとに関わらずこの世に生まれ落ちてることと同義なわけで。わけのわからないボタンを、何が起こるかわからないままに押す、色んなものが飛び出してくる、思い通りにならなかったり、組み合わせて使う知恵を要求されたり。これって人生そのものじゃないですか。しかも押すのがちんこなんて(下ネタ的な)くだらないもので。このへんの感想は私が女で監督が男だから違う解釈っぽいですけど(パンフによると、この世のすべては男から始まってるから、男は「精子」そのものかもしれないし、違うかもしれない、好きに解釈してください的なことが書いてありました)。
  • 脱出できそう→寸でのところで無理、を繰り返すうち、男が言葉を忘れたようになって意味不明の叫びだけをあげるようになるのもちょっとリアルでした。そりゃあんなとこいたら気もおかしくなるわ。私ならあの白い部屋に行ったらとりあえず全部のちんこを押して何が出るか確かめるなーと思いつつ、でも押したら何が起こるかわかんない・もしかしたら命に関わるような事態になるかもしれないわけで、そうなると途中で怖くなったりするのかなーとかぼんやり考えつつ。
  • ドアを開けたものの狭い部屋に閉じ込められちゃうとこの啜り泣きでは「ちょっとかわいい…」とか思ってしまった。
  • 第二の部屋「実践」。ここは、「神様と世界のなりたち」のパートだと私は思ったんですよね。神様だって、なんか崇められてるけど実はどんな結果が起こるか知りもせずにとりあえずちんこ押してみてたりするんじゃないかと。その結果現実世界ではどんどんと色んな事が起こったり変化したりしてる。この世に起こってる事象に意味なんてたいしてない。男が壁のちんこをむんずとつかんで上っていく、どんどんトランス状態になっていく、ところの音楽が私の好きなピコピコ系で楽しかった。松ちゃんの動きも映像もはまってたと思います。
  • メキシコパートと閉じ込められ男のパートの交錯は、私はてっきり男が試合のリングに飛び出してくるのかとおもってたんですけど、違いました。違ったほうが面白かったからよかったけど。脱出に向けて激走する松ちゃんの走り方もよかったです。
  • パンフでは「実践」の部屋のことは、神様というよりも「一人の人の行動が他の人々に影響を与え、繋がっている」という繋がり重視な感じで書いてありました。確かに、そのほうが次に書く「未来」の私の解釈とも合うかもしれない。
  • そして辿り着いた第三の部屋「未来」。世界地図を背景に、男が一歩踏み出すあの最後は私、すんごーく好きです。何が起こるかわからなくても、キリがなくても、意味なんてなくても、人はやっぱりちんこを押すんだと。「今まで押し続けてきたんだから、これからも押す」。それだけ、という感じが絶妙なタイミングとカットで表現されてました。
  • そんなこんなで、意外に私の胸を突いてくれた映画でした。松ちゃんが監督じゃなかったから「はああ?」ってなってるかもしんないけど。上に載っけた写真の、天井を見上げる松ちゃんの顔がうつくしかったなあ。

あ、それと予告ですんごいコワそうな(痛そうな)映画を観たよ。3Dなの、死が追いかけてくるの!調べたら「ファイナル・デッドサーキット3D」だって…。がくぶる!