零崎軋識の人間ノック/西尾維新 ★★★☆

人間シリーズ2冊目。双識に次ぐ零崎ナンバー2の軋識、別名・玖渚の仲間「街(バッドカインド)」式岸軋識のお話。わりと人間味ある人だったので、まだ読みやすかったかな。双識や人識に挟まれてそこまで最強ではないし負けるし、暴君に惚れてるし、ふたつの組織を行き来してるし…うん、かなり揺らぎのある零崎ですよね。でもこの人が零崎で他の誰よりも多く殺して誰よりも長く生きた殺人鬼だってのも面白い。二律背反な部分をもうちょっと深く読みたかった気もします。最終章で哀川潤に振り回されながらも最後にはほんっとうに楽しそうに笑う、というシーンは後味がよくて好きでした。
内容は、本編を読んでいれば知ってる顔ぶれがどんどこ出てきて楽しいです。クビツリであっさり敗北したかに思えた策師・萩原子荻がなるほどここでは零崎を相手に活躍してます。軋識VS千賀てる子さん、双識VS闇口濡衣、人識VS西条玉藻、そして本編で散々匂わされたままだった人識VS匂宮出夢の馴れ初め。思ったよりずっとちゃんと関わっていた…っていうか好き合ってね? あ、あとちょっとだけだけど10歳の石凪萌太VS軋識と、哀川潤VS闇口憑依もある。盛りだくさんで嬉しい。やっぱ人識が魅力的なのと、あと子荻ちゃんにストーカーする女子中学生のプロ=双識が面白かった。楽しく読めました。

 別れの言葉も、去っていくその姿も、零崎人識の意識の中には入ってこなかった。大の字のまま……全身がぶるぶると震えている。
「こ、殺す……絶対に殺す……」
 中学三年生にして、見た目の通り、身持ちの軽い遊び人である零崎人識は、勿論これまでにキスをしたことがないとは言わなかったが、だけどキスをされたという経験は、これが初めてだった。
 つまり。
 これまで匂宮出夢から零崎人識に向けての、一方的でしかなかった戦意と因縁が、このとき、逆向きの方向、零崎人識から匂宮出夢に向けても、生じたのだった。
「兄貴にもされたことねえのに……、絶対に絶対に絶対に許さねえ……匂宮出夢……、今度会ったら、すげえキスしてやるからな……」

なんか色々と問題発言w