シス・カンパニー公演「K2」初日15時


http://www.siscompany.com/03produce/30k2/index.htm

観てまいりました。ありがとうございます。
待ちに待った、堤さんとの二人芝居登山。帰ってきて興奮のままに書いてます。期待とハードルがうなぎのぼりだったこの公演、それなのに、その更に上をいってすんっごく良かった!
以下ネタバレ感想。


  • 死に近い極寒の氷山の岩だなで、二人きりで毛布にくるまっているところから舞台は始まります。まずは純粋に演劇として、すばらしい内容だったことがうれしい。
  • 前情報なにも仕入れず、原作も映画も見ずに臨んだので、前半はとにかくテイラーとハロルドの性格と関係性をつかもうと努力して。テイラーは口では大きなこと言ってるけど、芯は弱く、ハロルドに助けてもらいたいって依存してるのね。ハロルドは愛する奥さんも子どももいて大人、足を怪我してても穏便に振る舞おうとしている。ふむふむ、と冷静に観ていたはずが。過酷な状況で精一杯あがいたあと折れてしまうテイラーの表現で、ぐっと剛に引き込まれた。
  • ハロルドを残して自分だけ助かるなんてやだやだ!と駄々をこねるテイラー。ここで今までの関係性(えばるテイラー、なだめるハロルド)が一転する。そこに至るまでの積み重ねと矛盾がなくて素晴らしかった。聞き分けのないテイラーがかわゆいし!折れたテイラーをあの手この手で奮い立たせるハロルドが(頭ぽんぽんしたりするんだよ!顔ちかいよっ!)、テイラーにとって大きな存在だってことが言葉でなく伝わってくる。だからこそ、このあとの展開が泣けるんだ…
  • こう見えて私、あんまり泣かないんですよ。それが号泣。容疑者Xのときの更に倍、泣いたかもしれない。鼻水出るし、ハンカチはないし、困りました。もともと、こういう題材、自然災害の中で生死の関わるヒューマンドラマによわいってのもあるけど、それでも感情的にどかんとキすぎだろと。二人の役者としての力に恐れ入りました。終盤もう、涙で前が見えないよ状態で、最後堤さんの迫真の独白の意味がつかみきれなかったくらい。極限状態が、終幕までずっと続くからずっと油断できないんですよ。本当にすごい。
  • 堤さんは前半の受け身の芝居、そして葛藤の見せ方、やつれ方、最後の静かな迫力、ほぼかんぺきです。剛はもっとやれる部分があるので、これから公演を重ねればもっとよくなると思う。それでも初日から「剛らしさ」がしっかりとあった役柄だった。テイラーは鼻持ちならないいばりんぼうで、弱い自分、無力な自分を隠したり実感しないように悪態ばかりついているけど、ひとたびその仮面が剥がれたときのギャップ、その奥の純粋な動機が見えたとき、私はテイラーってもっと狭量でいやなやつかと思っていたのに、ああこれは「剛の」テイラーだな、と感じてそこにやられてしまったんだと思う。崩れる表現、ハロルドへの愛の表現、見事でした。クライマーの二人にとって、あの状況になったときからハロルドが死ぬしかないことは「わかって」いたんだと思う。それを何とかできない無力な自分、だからテイラーはあんなに人格が壊れるところまでいったんだし、私も感情的に揺さぶられた。愛ゆえに。
  • 例によって鼻からちいさなつよしがぶらーんとそれはもう盛大に出てたんだけどね。それをガン見して真顔で芝居を続ける堤さん(まあ当然なんだけど)。緊張の切れないすばらしさ。
  • 静と動のバランスも良かった。相手が堤さんだからこそできたことだと思う。テイラーはザイルを使って何とか二人で助かろうと動きまくり、怪我で動けないハロルドは、葛藤しながらもテイラーを生かして帰そうとする。これが男二人の壮絶な心の交流のドラマでなくてなんだというの!しかも、ちゃんと説明的なセリフじゃなくて、言葉の応酬、喧嘩、動作、空気で伝えて泣かせてくれた。アインシュタインとか、量子論クオーク、等々難しい話が続くけどがんばってついていく。ハロルドの説得の仕方とかまじ凄かった。うっう…(思い出し嗚咽)。
  • セットと照明もよかったです。そびえ立つ氷壁、狭い足場、そこを剛が実際に登ります。上からザイル一本で降りてきたりもする。けっこう高いので(8メートルはある)危ない。息遣い、泣き声、呻き声、えろくてセクシーでどきどきした。剛テイラー、喋り方がところどころ可愛くてツボる。「(突然棒読み)たすけてー」とか。「こわいよお…」とか。大声で告白しとったし!やっぱり剛のあの声は、堤さんにも負けない武器だと思う。
  • 褒めすぎかなあ?気になったところを挙げるとすれば、ダウンジャケットが新しすぎる(劇中でフォローあり)、剛の顔がきれいすぎる、とかそれくらいかな(笑)。あとやっぱり初日だからか3回くらい噛んだし、前半は口の回りが甘かった。
  • テイラーが去るシーン。二人で毛布にくるまっていた舞台上には、生ける者はいなくなり、ハロルドだけが残される。死の待つ氷壁に、神々しい光りが注ぐ(あまりの美しさにもうこっちも涅槃にいきそうですよ…)。ひとり残されたハロルドが最期に悟ったこと………泣きすぎて堤さんの圧巻の芝居をちゃんと受け止めきれなかったので、それは次回観劇するときにちゃんと確かめたい。あと、純粋に男のドラマにのめり込み過ぎて萌えが脇にいってた感があるので、次はもっと萌えれると思うw

K2、すごいです。おすすめ!!立場も芝居も経験も上のひととがっつり組んで舞台ができるというのが、こんなにも幸せなことなんだと知った。山「K2」についての情報や、登山についての解説を仕入れなきゃ。
まとまってないけど、興奮のままにあっぷだ!