悪の教典(上)(下)/貴志祐介 ★★★

とびきり有能な教師がサイコパスだったとしたら、その凶行は誰が止められるのか──ピカレスクの輝きを秘めた戦慄のサイコ・ホラー。2010年度「このミステリーがすごい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、第1回山田風太郎賞。

上下巻で長いわりに、字も大きめだし文章も読みやすいしでするすると読めた。主人公の蓮実はまさしくサイコパス（http://www.psy-nd.info/）で、早いサイクルでちょっとでも邪魔だと思った相手を次々殺したり罠にはめたりする。とにかく我慢がきかない性格だなあーと呆れるくらい…というか我慢をする必要がない、と思ってるからか。頭はいいし行動力もあるけど、犯行がドミノ倒しにばれそうになって下巻で大量殺戮になるのは、上巻の予告にあったとはいえあららーという感じだった。けどやっぱり面白いんだよね。蓮実がどんなことをしでかして、生徒たちがどこまでそれに抗えるのか、最後は蓮実はどうなるのか、結末まで一気読みでした。証拠となる物件は、事前にちゃんと装置が明かされていて小説としてとてもフェアー。逮捕の瞬間を蓮実視点で書いてくれなかったのと、安原の心情をはっきりと書かなかった（まあジャスミンでわかるけど）のと、蓮実がちゃんと死刑になるのかどうか、そのあたりをぼかしてるのは残念だったのと同時に余韻を残すためにうまいなあとも思った。あと、蓮実が執着していたカウンセラーの聡子先生が何かひどい目に遭わされるのかと思ってたんだけどそこはスルーだったのが拍子抜け。上巻の最後の校長の演説が皮肉と笑いと勢いがあっていい引きだった。小説というよりどこか漫画的な話で、だったら猫山先生にも活躍してほしかったなーとか。
そういえば昔、某さんがサイコパスな同人を読んですごい納得したことがあったなあ。また読みたいな。
貴志さんはたぶん「青の炎」と「黒い家」しか読んだことなかったと思うんだけど、どうもこの作品より「新世界より」のが評判高いようなのでそっちも読んでみようと思うます。