海のふた/よしもとばなな

 

ふるさと西伊豆の小さな町は、海も山も人も寂れてしまっていた。実家に帰ったまりは、ささやかな夢と故郷への想いを胸に、大好きなかき氷の店を始めることにした。大切なおばあちゃんを亡くしたばかりのはじめちゃんを預かることになって…。自分らしく生きる道を探す女の子たちの夏。版画家・名嘉睦稔の挿絵26点を収録。

基本的に、ばななさんの本の主人公はみんなばななさんの分身なので、主張が同じ。よほど気になる気付きだったのか、海に潜って別の次元で生きてる魚さんたちと目が合うくだりがハワイの本と繰り返して書かれていた。嫌な目に遭って、嫌な思いをするんだけど、それを無理やり濾過して自分の心をきれいに平穏に保たなくちゃならなくて、たいへんだなあと思った。きれいな心もちの二人っぽくありながら、案外他の人を悪しざまに言ってるところに笑ってしまった。そして、検索したらこれとなんくるないの2冊は既読だったという…(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20051106#1131257303)。私の海馬はもうだめだ。

「だって、いっぱいお金が入ったら、なにができるの?」
「今よりも広い家に住んで、欲しいものが買えるんじゃないの?」
「そうだよね。そういう感じだよね……。」
「携帯電話もかけほうだいかけることができるし。」
「うん。でもそんなにかけるところある?」
「私は友達が少ないから、ない。」
「でも好きなところには住みたい」
「そうだね……家族がいて、やることもたくさん普通にあって、この世に全くひとりでせっぱつまって立っているって感じじゃなかったら、みんなさほどお金は必要ないんじゃないかなあ。人生で何かが足りなかったり、愛情に問題があるから、お金が大問題になるんじゃないかな。」
「私たちにはわからないことかもしれない。おかしなことがたくさんあるし、いろいろな人がいすぎるかも。できればなんでもかんでも得したい、ってみんな思っているようだし。」