スロウハイツの神様(上)(下)/辻村深月

 

最後まで読んだら面白かった…。ハケンアニメ!に出てくる作家チヨダ・コーキがほぼほぼメインの話。彼の、恋の話。
正直終盤までは何やってんのこの人たちはぐるぐると…とちょっとだれてたんだけど、終盤で一気にもっていかれた。なるほど、そのために、その仕掛けがバレないために長々延々と描写遠回りしてたわけかー。初対面のあいさつ、図書館の本、コンビニのケーキ、ちょっとずつなんだろう?と思ってたことが解消されてスッとした。これはチヨダ・コーキを魅力的に見せるためによく辛抱して書かれた本だなーと思った。実際のところ、コーキのその感情は恋なのかあやしいものだと思うけれど、それでもいいし幸せになってほしいと思わせるだけの過程描写があったから受け入れやすい。読み終わったあと、また上巻からあのときコウちゃんがどうしていたか、を読み返したくなる感があった。
私は推理小説をあまり読まないんだけど、それは読書中ずっと引っ張られた謎が「実はこうやって華麗に殺してました!」とか「実はこういうふうに密室トリックを仕掛けてました!」だったところで、「へえーふーん」以外にあまり感想を抱けないからだったりする。実行手法の謎よりは、どの動機とか、感情とか人間関係とかの謎の方が読んでて楽しい。この本もまあやっぱり書き方はずるいんだけど(幹永舞の正体とかも。読み返したら地の文での書き方、ギリギリのとこで押さえてはあるけど…)。
ここんとこ辻村作品を追ってるんだけど、途中まではもういいかなーと思ってたのが、最後まで読んだらもう少し数を読んでみようって気になった。ちょっと不可解な鬼編集担当・黒木さんの人となりが気になるけどもっとメインで出てる話あるのかなー。