砂の器 最終楽章前編(3/21)

最終回は前後編ですか。つーかそれ普通の最終回の一回前、でいいのでは(笑)。

宿命の中身は、おそらく部落問題を背景にした、村八分。その末の村人30人殺し+放火の末の逃亡生活、だったわけですね。本浦さん役の原田さん、燃え盛る村長宅から出てきたときに肩が盛り上がって、のしのし怒りで足を踏み鳴らして。怒りと、人を殺めた興奮と。怖かった…。
原作ではハンセン病という天災+差別という人災だったのが、今回のドラマでは生れ落ちた土地という宿命+差別という人災に換えられていたわけで。現代の日本で生きていてさえ感じる、集団心理の恐ろしさ。そこには個の血の通ったにんげんはいないです。ただ、にんげんが呑み込まれた大きな流れがあるだけ。その流れに身を任せる醜さ、残忍さに、気付けるかどうか。本当おそろしい。
後半、楽曲「宿命」にのせての親子の放浪が延々20分以上。凄い冒険したなあと思うけど嫌いじゃありません。紅葉の森の中で、口をもぐもぐさせながらお父ちゃんを見てにこーっとした秀夫(子役)が可愛いくて。あの笑顔凄い。何でもない砂丘を歩いてるシーンで、色々考えちゃって涙が滲んだり。秀夫はこんなにちっこくて、何もわからないまま差別を受け止めるしかなくて、お父さんが人を殺したことをわかってても大好きで。もうあの差別の世界に戻りたくなかったから死に物狂いで願って他人の戸籍を手に入れたんだろう。こうして歩いてた小さな秀夫が、成長して、ピアノで生計立てて、挙げ句身を守るために恩師を殺してしまう。和賀英良になっていく。そうなっていってしまう道がちいさな背中の先に見えることが、どうしようもなくかなしい。秀夫が秀夫で生まれたことから始まった不幸と幸福。
今西刑事が和賀のために泣いてくれたことが、救いだと思いました。和賀の、宿命に疲れた心は癒されるのか。どうか見事に捕まってください。