イズ・エー @ユーロスペース(渋谷)

少年は雑踏に紛れ、パソコン画面に文字を打つ。僕らは何も感じない、ここが僕らの静かなる戦場………
少年があとにした渋谷のレストランで爆破が起き、大量の死者が出た。偶然その場に居合わせた何の関係もない人々、刑事と妻と幼い息子、叔父伯母と一緒に食事をしていた女子高生。ホーリー・ナイトを名乗る犯人は一時社会現象になるが、捕まったのは14歳の少年だった。
彼は少年法に守られ4年で少年院を出院する。
事件で最愛の家族を失った刑事は彼の社会復帰を知り、動き始めた。たった4年で更正など出来るのか。また、少年の父親も教師を辞め、失われた家族の絆を取り戻そうと息子に接していた。息子は変わったんだ、私は息子を信じています………
そんなとき、少年の爆破事件を密告した昔の友人が、その両親ともども凄惨な死体で発見される。

“少年A”たちによる凶悪犯罪が多発し、少年法に守られ更正、社会復帰を果たすという出来事が日常になりつつある社会問題を、父親と息子という視点から切りとった衝撃作。
模倣犯』を始め多くの出演作を持つ名脇役、津田寛治が初主演を飾り、“少年A”に小栗旬、その父親役で内藤剛志がそれぞれ扮する。このほか戸田菜穂水川あさみ、らが共演。
無差別爆破殺人事件を起こした少年とその父親、そして殺害された被害者の父親の3人を濃密に描く。

なんというか、ド直球な映画でした。犯罪を犯す「少年」を育てる、親の側から描いたもの。先日見た「誰も知らない」が大人の視線を一切まじえず、子どもたちだけの生活を描いていたのとは対称的に、父親二人の葛藤が延々描かれる、大量殺人を実行した当の少年A・ユウヤの心は最後の最後までわからない。理解できない、何故だかもわからない、それが親の世代にとっては正直なとこなんだろうなあと。自分の息子がなんであんな酷い事件を起こしたのかわからない、何を考えてるのかわからない。内藤さん演じる父親は「息子を信じてる」と口では言いますが、全然信じてるようには見えないのでした。「息子を裁くのは、父親の役目です」というキャッチの通り、息子を裁こうとやって来たシーンは物凄く堪えました。うわああ、あ、いやだいやだ。それでも及ばなかったと知った瞬間の父親の姿。とにかくそんな父親像を最後まで演じきった内藤さんの演技は圧巻。やっぱ経歴は伊達じゃない。
印象に残ったのは、二人の父親が喫茶店で夜明けを待ちながら話し合うシーン。同じ「ひとの子の親」として向き合い、心を通わせてさえしまうこのシーンが、何とも嘘っぽいようでいて妙に浮いて心に残っています。「こんなことなら、高望みせずもっと普通に育てれば良かった」「高望みして何が悪い、オレだって一馬に嫌というほど期待していた」「ほんとうに、育て方だけが犯罪を犯す子どもをつくる原因だと思うか」。この場面があったからこそ、刑事は最後に「少年の父親」として躊躇せず行動できたんだと思う。
観たほうがいいよ!と明るくお勧めはできない映画ですが。親の世代が見るものなのか、子どもの世代が見るものなのか。私はちょうど中間の年齢なので冷静に見てしまった気がする。