チルドレン/伊坂幸太郎 ★★★★☆

チルドレン

チルドレン

なんて軽やかな小説! 伊坂節の軽妙なセリフと、愛すべき奇人変人(この場合陣内ひとりのことだけど)がとっても面白かった。滅茶苦茶な理屈ばっかり言ってるハタ迷惑な陣内だけど、居酒屋でヨッパライおやじたちをやり込めるとことか、スッとした。他も好きなシーンがたくさんある。陣内がかっこ可愛くて、なのに行き過ぎてなくて、これくらいの変人加減なら現実にもいるいい具合で描かれてます。私の大学の先輩でも似たような感じの人がいた。その人はいっつも赤い帽子を被って賑やかしみたいにワーワー言ってたなあ。やっぱり彼もわりとみんなに愛されてました。
誰かが死んだり復讐したり大事件が起こったりもしないので、本当に読みやすい。説教くさくないし。「重力ピエロ」みたいのよりこういう方が合ってると思うなあ。続編出してほしいくらい。ドラマ化しても凄くよさそう、主人公が家裁の調査官とか時代的にも合ってると思うし。

文中に出てくる芥川の作品、侏儒の言葉 (岩波文庫 緑 70-4) になぞらえて陣内がつくった落書き編。

女子トイレは迷路になってんのかよ!
時間がとまってんのかよ!

こんなかわゆいツッコミしてくれるひと身近にいたら惚れる……!

私が今、真っ当な普通のひとに勧めるとしたら、漫画では「のだめ」、小説ではこの「チルドレン」です。それくらいお勧め。人生これくらい適度に賢く生きていけたらいい。