みずうみ/よしもとばなな

みずうみ

みずうみ

★★★★ ずっとテーマとして書き続けている「喪失と再生」に加えて、最近は「社会との対立・現代との関わり方」みたいなことも顕著に出ている。オカルトも肉親の死も入っていて、今までと同じようでいて、やっぱり違う物語。今回のように登場人物に伏せられた過去のトラウマや事件があり、それがだんだんと明かされていく構成、というのが私はあまり好きではないのだけれど、さすがにうまい。中島くんが壊れてつぎはぎなかんじもよくわかった。そういうひとが主人公ちひろのそばにいたいのもよくわかる。ずっと読んできてるせいか、描かれていることも言いたいこともよく理解できる。だけど「しっくりくる」と素直に口に出せなくなってきたのは私が大人になったからか、純粋じゃなくなったからか。思春期には吉本ばななを読んで安心し、今は読むと不安になる。不思議。きっといま私が、社会との関わり方をうっすら考えてる時期だからなんだろう。