テレビ朝日ドラマスペシャル「愛と死をみつめて」

一応真面目な感想をこっちにも。時系列。



◆放送前

愛と死、本放送はいよいよ今週末!番宣(序章)の最後の方がほんとうに辛くて、特に昔の映画の吉永ミコが脳に達した腫瘍の痛みに醜く顔を歪め、激痛を堪えながら明るくマコに最期の電話をするシーンなんか涙ぐんでしまった。あれを超える表現が果たしてできるのか。顔の左半分の骨をほとんど取ってしまって、それはどんなにか女の子にとって辛いことか、好きな人に見られたくないか、きれいな映像でどこまで見せてくれるものか楽しみです。今回のCM映像はわりとうまく前半のシーンやイメージショットだけで終わらせてる印象があって、ネタバレになりすぎてなくて好きだ。今の私の勝手なイメージだと、マコのあほうなとことかわからんちんなとことかが賢すぎる悟りすぎるミコの生きる慰めになってるような、そんな印象を受けてる。まさしく男の子と女の子だ。そういうのは、せつないね。



◆第一夜

すばらしかった。さすが犬童一心監督。露悪的な部分もあって、ただの純愛じゃないふうで、胸をえぐられるような。きれいなだけじゃない、ちゃんとエゴと我が侭とすれ違いと。色んな感情がそこにあった。睡眠薬ばりぼりのシーンは凄かったね。剛が決死の顔をしていて、迫力があった。二人して暗い土だらけの穴に落ちて、汚れて泥がついても生きていくということ、その秀逸な表現。
随所でマコとミコは互いに相手のことを本気で怒っていて、決して万能に愛し合っていたわけじゃなくって、そこがとてもいいと思った。

病院でのラブシーン。ジョゼにもあれ風な場面があったけど、あれはもう犬童監督の得意技ですよねえ。女の子から誘う、あの生々しさ+恥ずかしさ・いたたまれなさったらない。広末と剛の添い寝並びの画も良かったし、キスの仕方も良かったし、二人とも本当にじんわり涙ぐむんだから役者としてえらい。最近の別のドラマで声や呼吸だけは本当にうまーくうまーく泣いてるんだけど目から水がちらっとも出てないってのを見てて残念だったので余計。ミコの病気のこと・手術のことを病室で聞くシーンでも剛はぶわあっと涙ぐんでいて良かった。

振り返ってみると他にも好きなシーンがたくさん。

  • 裸でテニス…なんでマコだけランニング脱いでるとですか そしてあの腰のライン!まんまと萌。
  • 冷たくするミコ。そこはかとなくプライドが高そうなミコ。山猿を軽くいなしちゃうようなところ。その性格づけが好みだったから助かった。もっと潔く前向きな子に描かれると思ってたから嬉しい誤算。嫌味なく演じられる広末ミコに骨抜き。大阪弁もイントネーション完璧です(兵庫生れの証言)。手紙は関西弁にしてくれへんかったんやなー。
  • アカシアの雨がやむとき。看護婦さんに手紙を読んで聞かせるシーン。「単純なひとなん」。
  • マコの手紙の字がきれい…… 雑誌インタビューでさんざん言ってた剛の字が不採用な件だね 笑。それは言うまでもなく字が下手だったからだと思うよ、とみんなわりかしツッコんだですよね?でも私は剛のあのへた字はわりとマコのイメージに近いと思うんだけどな。
  • 重光医師から手術で顔半分なくなるという告知。後ろからのショットだけなのに爆発しそうな気配、ぴんと張りつめた空気、今にも喚いて叫び出すかと思った。凄く長く感じた。
  • 裏スマステのシーンありましたね。あれですよあれ、お金つかますシーン。あの会話に、

「彼女は手術を嫌がってるんだ」
「なんで…」
「わからん」
というのも挟まってました。慎吾の「わからん」がまるきり局長だったので(笑)耳に残っただけなんですが。

第二夜も楽しみ。ミコさんに供えるお花を買いました。ちっこいけど、きもちだけ。



◆愛と死 第二夜

はああきつかった。純愛ものをカサにきながらも、実はそうじゃない闘病死もの、それを見るとこんなにもきついものだったかと改めて。破壊力が物凄いんだもの、危険だわーどうりでみんな純愛に逃げるわけだわー。美しいだけじゃないと、見終わったあとも胸が詰まってしまう。犬童版ミコの迫力にマコはずっとのまれっぱなしで、だけどそれがよくて、最期のあのどうしようもなく無力なマコのむせび泣きが際立っていた。

まとまんないので箇条書きで。

  • らぶなシーン

ミコマコのキスは今日もどきどきしました。いいよなー撮り方がいいよ、オリンピックモニュメント前のキッスなんて、長くて、ミコが手探りでまことさんの手を握って、とってもエロチックで。あーなまなましい。剛のこんなすてきなキスシーンが見れるなんて眼福!

  • 愛をみつめて

今日もマコがまーったく空気読めてなくてどうしようかと 笑。ミコに追い返されるシーンで「顔のことなんか気にするな」にはさすがに怒。酷い無神経。あれは「重荷だった」「ひるんだ」じゃなくって、てっきり「ミコにいいことを言う『俺』に酔ってた」ことを後悔するのかと思ってたらそこまでではなかった模様。でも明らかに「いいこと言ったのに俺」と信じて憮然とする顔だったよね。男の子と女の子の差なのかなあ。山猿とお嬢様の差?
だからそのあと、自分の顔を見た落ち込みから、マコの自殺未遂を手紙で知って電話で前向きになるところまでの流れがちょっと唐突過ぎたと思ったけど。元々ミコは顔を半分なくして一回死んで、残りは好きなマコの望みを叶えるために、そのほかの人の為に、生きようとしたようなもんだからマコを殺したら本末転倒だと思ったのかなー。マコがいることでミコは明るく最後まで活発な自分を演じられた。人から同情されないように強く振舞えた。ミコが望むミコでいられたのはマコがいたおかげなのかな、とギリギリのところで納得できた。

  • ミコの演出は相変わらずものすごいことに

「掃除しといたら誰もマコのこと悪く言わへん。大目に見てもらえる。あたしってしっかりモンやろ」って、それは下手したら病院で患者さんに尽くすミコ像を揺らがせるものなのに思いきったことするなあって。「あの先生いじめるの趣味なん」にぷっと吹き出しそうになる。ユースケの怯えた眼とも相まって余計におかしい。オソロシー女やでミコ。でもなんか可愛いのね、やっぱ。大阪弁の意地っぱりを描かせたらピカイチやなあ監督。

  • 「駅だよ」って答える剛の言い方と声があまりにも可愛すぎて現実に引き戻される。
  • 俺が勝ったら

マコはインジャンで最後までミコに死ぬことを許さなかったね。厳しくて、酷で、胸が痛くなった。純愛なら、優しい愛なら、あそこで許してあげると思うの。だって充分がんばってもう限界なんだもの。それでも、あの場面でも最後までチョキを出せるのこそがマコの愛だったなら、今までの所業もアリだなと思えた。
ほんとうに、たたかいだ。

  • 死をみつめて

ミコの顔を剃りながら泣くマコの嗚咽。呆然と涙ぐむ重光医師の表情。すばらしかったなあ。誕生日プレゼントの話をしてたけど、ミコは最期までマコに何かあげたかったんだなあと。そういう意味で、エンディング曲のあとのラストシーンのチョイスは、マコがミコにずっとああいうふうに与えられていたってことの象徴なんだろうか?笑顔もそうなんだろうけど、とてもいいラストだったと思う。

実話だということやバッシングのことは、ほんとうのところってどうやっても、どんなに想像してもどんなにうまくドラマ化しても当事者たちにしか絶対にわからないとこだと思うから特にこだわりはありません。だからひとつのドラマとして見ました。
ただきれいなだけじゃなくて、痛みも傷も膿もある、剛も単なるいいやつじゃない、見応えのあるおはなしに仕上がっていた。満足です。CM抜いて編集して、また二夜通して見ようっと。

うわあ。このまま舞台と映画(とライブ?)の嵐がくるわけで、今年は気を抜けないねえ。