さくら/西加奈子 ★★★★

さくら

さくら

本屋大賞ノミネートの、家族小説。やさしい父、美しい母、ヒーローな兄・一(ハジメ)、破天荒な妹・ミキ、そして犬のさくら。物語は、居なくなっていた父が年末に実家に帰ってくると知り、東京で暮らしている大学生の主人公・薫(次男・真ん中っこ)が帰省するところから始まります。なぜ父は出て行ったのか、なぜ兄は今はいないのか。それを知りたくて物語を読み進めるも、幼少の頃のエピソードの数々に引き込まれました。しあわせな時間、あったかな家族、仲の良い三きょうだい。でも主人公が気付かないうちに、いつのまにか、何かがおかしくなってしまっていた…。その過程の描き方が詳細で、すべての訳が明らかになったときにはひとつの家族の崩壊を思ってせつなくなる。長谷川家は昔6人で、なのに今実家には母・妹・さくらの女3人しかいない、その対比が見事だった。ミキちゃんの荒々しい大阪弁の態度が好きだっただけに、よくよく考えればそのえげつなさにウワ…と言葉をなくした。ラスト、さくらを中心に少しだけ再生するところにじんとくる。家族を描いたいい話だった。大阪弁だというのも大きい、作者はわたしと同世代の大阪育ちの女性。http://www.webdokusho.com/rensai/sakka/michi53.html