イルカ/よしもとばなな

イルカ

イルカ

★★★★ たぶん妊娠出産の実体験を元に書かれた力作。それでもちゃんと小説にはなってて、さすがに体験したことだから迫力と説得力があって、物語的にも面白かった。男女、子ども、家族、人との関わり、さらりと乾いているのに深い。それにしても男女の恋愛の描き方がよく読むとえぐいというか身も蓋もないというか、生々しい。そう感じるのは、共感してるからなのかなあ。ラストの病室のシーンだけがちょっと違和感、できればマミちゃんか妹ちゃんの話の方で締めて貰いたかった。
帯のコピーにもなっている文中の表現がすてきだ。やっぱりうまい!

もう、どこへもいかないのに、どこまでも遠く

はじまりはいつもいい、なんだってすてきなのだ。それを引き延ばすのが大事なんだろうな、と思っていた。そこからあとは終わりまでまっしぐらだ。でも、それ以外のことが起きることをいつでも私は期待していた。愛とかそういうことではなく、この磁力が長く続くような、他にも楽しいことのある人生をだ。