流星ワゴン/重松清

流星ワゴン

流星ワゴン

37歳・秋
「死んでもいい」と思っていた。
ある夜、不思議なワゴンに乗った。
そして――自分と同い歳の父と出逢った。
僕らは、友だちになれるだろうか?

主人公の永田一雄の前に、1台のワゴン車が止まったことからこの物語は始まる。ワゴン車には橋本義明・健太親子が乗っており、彼らはなぜか永田の抱えている問題をよく知っていた。永田の家庭は崩壊寸前。妻の美代子はテレクラで男と不倫を重ね、息子の広樹は中学受験に失敗し家庭内暴力をふるう。永田自身も会社からリストラされ、小遣いほしさにガンで余命いくばくもない父親を訪ねていくようになっていた。「死にたい」と漠然と考えていたとき、永田は初めてのドライブで交通事故に遭い死んだはずの橋本親子に出会ったのだ。橋本は彼を「たいせつな場所」へ連れて行くと言う。そして、まるでタイムマシーンのように、永田を過去へといざなう。
壊れていく家族のほんとうはたいせつだった瞬間。過去の出来事をなぞりながら、永田には何もできない………

★★★★ 「疾走」が重すぎたのでしばらく敬遠していた重松さん。これはよかった!永田のお父さん(チュウさん)のキャラが秀逸。チュウさん・主人公・その息子、三代のすれ違いと関わりが読ませる。男の親子はこんなかんじなのかもなー。橋本親子の関係もせつないし、終わりの方別れのシーンでは涙が。唯一妻の扱いだけがちょっとアレなんですけど、いい本でした。