ゆれる @新宿武蔵野館


東京で写真家として成功している猛は、忙しくも自由気ままな生活をしている。一方、地方に残り実家の商売を継いだ兄の稔は幼い頃から温和で誠実な人柄だが、いまだに独身で父親と2人で暮らしている。母の一周忌で久しぶりに帰郷した猛は、稔と、ふたりの幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に行った。渓谷にかかった稲り橋から流れの激しい渓流へ、智恵子が落下してしまう。その時そばにいたのは、稔ひとりだった。兄をかばうため猛が奔走する中、稔の裁判が始められる。事故だったのか、事件なのか。猛の前で、稔は次第にこれまでとは違う一面を見せるようになる。兄は本当に自分がずっと思ってきたような人間なのだろうか。当たり前と思い疑いもしなかった事柄の裏面が見え隠れし、裁判が進むにつれて猛の心はゆれていく。やがて猛が選択した行為は、誰もが思いもよらないことだった……。

★★★★ 兄弟の心の確執を鋭く描いた作品。ある意味壮大なきょうだいげんか。オダジョも香川さんもはまっていた。「おれとおまえはなんでこんなに違うんだ?」本心を吐露した稔の表情がすごい。でもあのほんとうの真実はどうなの…。あんまりじゃないかー! 兄だけは信じていたはずの弟、弟に何を奪われても黙っていた兄、そこに愛はあったのか。あったんだろうな、歪んでねじれてしまった愛が。最後の猛の絶叫が耳に残るきょうだいの映画。