ぼくのメジャースプーン/辻村深月

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

「戻って、みんなの前できちんとピアノを弾こう。そうじゃないと、この先一生、嫌な思いをするよ」
「Aという条件をクリアできなければ、Bという罰がくだる」、その声の力を先生は『条件ゲーム掲示能力』と呼んだ。
忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺される。大好きだったうさぎたちの無残な死体を目撃してしまった「ぼく」の幼なじみ・ふみちゃんは、ショックのあまりに全ての感情を封じ込めたまま、今もなお登校拒否を続けている。笑わないあの子を助け出したい「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへと通い、うさぎ殺しの犯人に与える罰の重さを計り始める。「ぼく」が最後に選んだ答え、そして正義の行方とは。

★★★★ 面白かった…。超能力を使って大活躍!という話ではないし、物語の大半は先生との真面目なやりとり、「能力の使い方のお勉強」と「使う条件決め」と「メンタル面でのケア」に費やされます。力を使って復讐するというのはどういうことか、罪に対してどの程度の罰が正しいのか、誰のためにそうするのか、その責任、命の重さ、……そういうことを、ひたすら小学四年生のぼくが一生懸命考えます。その部分が好きだったのと、それと同じくらい幼馴染みのふみちゃんとの会話はどれも良くって、特にメジャースプーンを貰ったときのエピソードはすてき。ぼくの出した結論も、決して頭がいいとは思えないけど必死でいじらしくて、伏線もたくさん張ってあったし、ウッときた。特に、自分もふみちゃんのようにはうさぎの命を考えていなかったことをちゃんと自覚して、謝って、そのうえでふみちゃんが大事にしてたことをわかってあげられる、そのくだりはよかった。それもきっと、ふみちゃんが教えてくれたことなんだもんなあ。動物の命のくだりについては、「…絶句〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)」の印象が私には強すぎて、既聴だったので。
自分が人を殺せる能力を持ったとしても、これくらい迷い怖くなるのが普通だと思うの。だから夜神月みたいにデスノートを拾ったからって人を殺しまくる、しかも自分の私怨の相手じゃなく世の中の害になる人間を大量に、というのはやっぱり異常だったんだなあと。よほど強靭もしくは狂人な精神でないと成し得ない。
秋山先生の優しい冷たさと容赦のなさに萌え・笑。「子どもたちは夜と遊ぶ(上)」に出てくるみたいなのでそっちも読んでみよう。同じ能力者である先生の過去話が気になって気になって…でもべつに「子どもたちは〜」にも書かれてないのかもしんないなあ?