小冊子「すすきのはら」木原音瀬

その、番外編。喜多川が堂野の籍に入るに至った経緯を描いた、時期的には「檻の外」収録の「なつやすみ」の中盤の時期の話。同性で籍を入れる、ということの意味を私はあまり考えたことがなかったんだけど、堂野はほんとうに普通の考え方をする男で、だからこそその過分でもないまともな愛を向けられたとき、普通の情さえ知らなかった喜多川は途方もなくしあわせになれたんだろうなあ。ススキを取ってきてくれたラスト、じーんと胸にキた。喜多川はいつまでも堂野に褒めてもらいたくて、喜んでもらって、ありがとうって言ってもらいたくって、こうして二人は死ぬまでずっといっしょに生きたんだろうなあ。いい番外だった。