箱の中/木原音瀬

箱の中 (Holly NOVELS)

箱の中 (Holly NOVELS)

どうしよう。萌えてしまった…!刑務所ものって、閉鎖空間だからだろうか、すげえどきどきした。私的にはBLとしてもきっちりしっかり萌えてしまって、つまりはBL直木賞ごめんなさい(笑)。喜多川が堂野を好きになったキッカケっていうのがあまりにもせつない。ムショでの辱めに耐えかねてずたぼろのぐちゃぐちゃで泣いてる堂野に何気なくした親切(それもただ、頭を黙って撫でてやっただけ)で「ありがとう」ってお礼をもらって、それがうれしくてもっと言ってもらいたくて親切をするようになるの。普通順番が逆じゃんか、だけど喜多川には今までありがとうって言ってくれるような相手も、その法則を教えてくれる相手もダレもいなくて、そこに現れた堂野が初めてそれをやってくれたから。二人のズレた会話がおかしいやらせつないやら。まさしく情操教育。だけどそうして、喜多川の最初のまともな男(もっとマシな言い方はないものか)として出会えたことが堂野の人生においては何物にも代え難いものになっていくんだから、よかったんだと思える。
で、そのあと「檻の外(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20060903#1157291682)」を読み返すと、案の定芝からの手紙を受け取った喜多川の描写でやっぱり余計にぼろぼろ泣けるわけですよ。あーもうタマラン。喜多川が死ぬまできっちりこの二部作で描かれてるわけですけど、晩年の二人を見たら芝はなんて言ったかな。ほんとうに、奇跡のように出会えた運命で、しかもそれはどんなに冷たく酷くされても喜多川が堂野の情を諦めずに信じ続けたたまものなのだ。

「もっと図に乗ればいいよ。圭がわがままを言っても、大したことない」
「取り返しのつかないことを言うぞ」
どんなすごいこと?と堂野は頭を撫でながら笑った。
「死ぬまで一緒にいてくれ」
掴んだ手を、握り締めた。
「一緒にいてくれるなら、これから先、俺は一生キャットフードだけでいい」