よしながふみ先生

彼は花園で夢を見る (ウィングス・コミックス)

彼は花園で夢を見る (ウィングス・コミックス)

私、よしなが先生の作品ったら西洋なんとかケーキ店(たぶん違う)でさえ全部読んだことなくて、恥ずかしながらあからさまにもぐりなんですよ。でもこのたび大量に貸して下さる神様が現れて、読み始めたんですけど、1冊目にたまたま手に取った作品がこれ。しばらく読んで、「わたし読んだことあるや…」と思い出しました。その昔、お城の話で、読んで凄く痛くてぐっさりきて、軽いトラウマになってたから最近男女逆転大奥読むまでよしなが先生に手を出してなかったんだった……。なのにばっちりそのお話しをまた一番に読んでしまうこの巡りあわせったら。もうあの領主と姉妹の話が痛くてせつなくて。おおよそこの世のすべての情感があの物語の中に詰まってるのかってくらいですよ。今更ながら凄い力量ですよね。楽師ファルハットと塔から身を投げちゃうってのも当時の私にはよほど衝撃だったんでしょう、その後の幸せなオチをまったく憶えていなかったくらいに。今回は大丈夫でした。とてもいい物語だった。ラストの領主ヴィクトールのシーンに「彼は花園で夢を見る」タイトルがきれいに被さって見えて、計算され尽くしているなあと。ほんと、大人が大人のために描いた成熟した漫画です。……そういえばこの漫画にはホモが出てこないなあ。会話でむりやりホモネタを入れる必要はないのにな、とは思った。




こどもの体温 (ウィングス・コミックス)

こどもの体温 (ウィングス・コミックス)

なんですかこのすてき親子は!!! キャ〜手を繋いで歩くなっつーの。萌。あまりにも健全でほっとする。こんなお父さんが欲しいし、こんな息子を育てたい(え)。

●中一の息子が妊娠させたかもしれない相手の女の子と病院へ検査にやってきて

「お父さんがあの日レストランでまた恥ずかしいことやってあたしは少しイライラしてた」「こんな大変なことになるなんて思わなかった……」「子供がいたらどうしよう……」
「森さんはどうしたい?」
「子供なんて産めない…… それに親に知られるのは絶対いや!!」
「そりゃ無理だな」「まず僕があなたの御両親に事情を説明して あなたのする事はこの病院に入院して中絶手術を受ける事(略)」「ほら別に世界が終わっちゃうわけじゃないだろう? 後は僕と紘一が森さんの御両親の前で土下座して謝って蹴飛ばされるくらいかな」「ーーーーー大丈夫だから」
「ごめんなさい」「おじさん何にも悪くないのに嫌な事いっぱいさせてあたし達…… 本当はあたし あたし……」

「家の保険証がどこにあるかも知らなかったの……」

(近頃の若い子は 大人びていて でも世間知らず 秘密が多くて でも無責任
 何だ 僕たちが子供だった頃と同じじゃないか)

「それからお前に宿題だ」
「え?」「ちょっと待ってよ 【女の子のからだのしくみーー親子でもっと話し合おう避妊とセックス】……?」
「それを読んで一週間後にレポートを提出しなさい」
「え〜〜〜〜?! やめようよぅ そんなオープン家族みたいなマネ うちみたいなスマートな家庭には恥ずかしすぎるよぅ」

「森さんはその100倍も恥ずかしかったんだ!!」

ね、まともでしょ。義父母の家で、つくる料理を通して亡くなった奥さんの思い出を共有する話もほんとすてきだったなあ。あ、あと「踊る王子様」の西園寺がちょっとゴロさんを思い起こさせますヨ。うぷぷ。面白いやつ。





1限めはやる気の民法 1 (ビーボーイコミックス)

1限めはやる気の民法 1 (ビーボーイコミックス)

1限めはやる気の民法 2 (ビーボーイコミックス)

1限めはやる気の民法 2 (ビーボーイコミックス)

良家の子女が集う名門・帝能大学ア法学部で、司法試験をめざす優等生・田宮は軽薄そうに見える政治家の息子藤堂と出会った。お金持ちの御曹司・お嬢様の集う超楽勝ゼミで、ちゃらんぽらんな彼らを見て憤りを覚える田宮だったが、藤堂に「キスしたとき同類かと思った」と言われ激高してしまい……。価値観の違うクラスメート達にあきれつつも、田宮と藤堂はちょっと奇妙な友人関係に。そんな2人も卒業間近、友達以上恋人未満の関係に変化が生じるか?

わーお、すばらしいです!とにかく真面目で地味なんだけど、いやあ何だろうこのやたらとしっかりした生活観と人生観は。出てくるやつがみんなまともなのね、金持ちは金持ちなりに(笑)。しかも受も攻もちゃんとかっこよくって一生懸命で、お互いに相手に惹かれる訳が納得できる。こういうの大好き。
1巻では、自分とは毛色の違うグループにうっかり入ってしまった田宮が、藤堂の考え方を聞いたり行動を見たりしてちょっとずつ「自分とは違う世界があるということ」「違うけど、そのひとたちなりの苦労があるということ」を知って、学んでいく。そうやって成長した結果、「普通」じゃないからとずっと認めてこなかった自分の性癖をも自認できるようになるんだよな。たくさんある人間の在り方のなかの、ひとつとして。その流れが、主人公の性格とも相まってすごくいいの。凄いのは、「自分はゲイだ」って自認するんじゃなくて、そういった呼び名や枠を越えた自分個人の人格として藤堂との関係を肯定していくようになるところ。それをこれだけ上手く描いた作品は初めて見たかもしれない。

「不破さん わりーけど その 付き合えない」「ごめん」
「あ そ やっぱり」
「けど不破さんのせいじゃない」
「いいって無理しなくても あたしだって別に」
「俺たぶん 女とは誰だろうがセックスする気になれねーんだ」
ぽかーん
「それって あたし言いふらすわよ いい?」
「かまわねーよ」

「なんか すっとした」

「田宮君!! あたし(卒論の代筆)引き受けてくれたらホモだって噂流さないでいてあげようと思ってたのに!!」
「そらどーも けど俺は女とセックスする気になれねーって言っただけで ホモだとは言ってねーよ
「そんじゃな 後期試験用のノートのコピーならいくらでも渡すぜ タダで」

「藤堂!帰ろうぜ」
「あ うん」(何だか田宮がどんどんかっこよくなっていくような……)

で、2巻では何だかんだいってラブラブなその後の田宮と藤堂の同棲生活が拝めるので萌えもしっかり補完できる。田宮は司法試験受かって大学の鬼先生になってるし、藤堂は学校入りなおして自分で夢だったゲーム会社たちあげてるし。田宮はあれだけ好意ある態度を示しときながら藤堂におあづけ食らわせまくりで普通だったら酷いやつでしょこれ(笑)それにしてもこういう、自分でも生活能力のある男らしい受はかーなり好きです。こうでなきゃね!

「藤堂〜〜〜〜〜〜〜」
「ん?」
「てめえ… いい度胸じゃねーか ここまで俺に恥をかかせたからにはそれなりの覚悟はあんだろーな あ?!」
「あれ? あの… 田宮ちなみにまだ入ってる…」
「なら早く抜け!!」
「ハイ…」

「…だからさ 何でわざわざ嫌いな奴のちんちんを陰毛が歯にはさまるほどしゃぶってやったり あまつさえそいつの精液なんか飲んでやったりしなきゃいけねーのよ? 他の奴らは知らねーけどこの俺が」「この俺がそんな事できる訳ねーだろうがよ…っ」
「田宮それって…」
「分かっただろ!もう二度とは言わねーからな!!」
「うれしい…っ!! うれしい!ありがとう田宮 俺もだよ…っ!!」
「うそつけ お前は好きじゃない奴の尻の穴だってヒゲつっこんだりできる奴だね」

よしなが先生はなんとなく淡白な印象を持ってたんですが、けっこうがっつり濡れ場を描写されていたんで喜び……いやいや驚きました。上の↑ようなシーンががっつり絵で描かれてるんですからねw そんときの受の顔つきや涙の色っぽいことといったら。さすがです。