シスカンパニー公演「写楽考」@Bunkamuraシアターコクーン

時は江戸・天明の世。地獄絵を志す「あの男」と極楽絵を志す貧乏侍の子・勇助は、 江戸八丁堀の八軒長屋で奇妙な共同生活を送っていた。そこに転がり込んで来た世直しを志す浪人・幾五郎。相次ぐ天災や飢饉で世情は不安ながらも、三人はそれぞれの志を胸に、熱き青春時代を送っていた。しかし、一人の女の死を境に、三人の人生は大きな運命の渦に巻き込まれていく。
10年あまりの歳月が過ぎ、寛政の江戸の世では、「喜多川歌麿」が描く浮世絵が一世を風靡していた。そこに突如、猛烈な勢いで錦絵を発表する正体不明の絵師 「東洲斎写楽」が登場。歌麿をしのぐ注目を集め出した。果たして、謎の絵師・写楽とは一体何者なのか? 写楽がその人生に背負った宿命とは?写楽を取り巻く人々の運命は?

堤さんの舞台の千秋楽、観に行ってきました。同居しているのちの写楽歌麿の対比、一人の女の死から転がり出す運命、その結末。面白かった……!
勇助(長塚圭史)がね!とくにかくえろい。なんだあのなまっちろい細い腕は。そして鬼畜。いやらしい声と喋り方で、クールに酷薄なセリフを吐く。鬱屈していて、だけど最後には泣きそうな顔をして殺される伊之のさいごの望みを聞いてやるのだ。同じ絵師として、ああいう性格のひとが伊之を心の底では羨ましかったり好きだったりしないわけがない。意思の強さや頑固ぶりや冷徹さが、かえって哀れを誘う。
前半で印象に残ったのは、実はおカヨと関係のあったと発覚した勇助の冷たい素顔、後半では、写楽の妻を誘惑する勇助、そして最後に処刑される写楽に会いにくるところです。勇助ばっかか(笑)最期も非常に彼らしく、写楽の没した4年後にお上に嫌疑をかけられての悔しさのあまりの狂い死にって…!はああ。
高橋克美さんの軽やかで重い笑い、キムラ緑子さんの見事に妖艶な声の出し方、達者な役者ぶりが凄かった。あと、写楽がね、最後にクマドリをして飛び上がりミエを切る場面は静→動の切り替えでははっとさせられたよ。TSUTAYA(と何度も脳内で変換してしまった)…いまや絵画で常識の複製はああやって、商人の商魂から生まれていったのだなあ。