わたしを離さないで/カズオイシグロ ★★★

わたしを離さないで

わたしを離さないで

自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――

ヘールシャムがむしろ特殊な環境だったってところが一番やるせなかったかな。残酷。他の施設の状況を想像してもそうだし、うっすらと真実を知りながら真綿で首を絞められるようにしてそのときに近づいていくヘールシャムの生徒たちにしてもそう。医療科学が進歩しているこの現代、これが現実に起こり得ないとは言えないのが人間界の怖いところだ…。なんで彼らは暴動も起こさずおとなしく従うんだろう、なんで先生たちはかわいそうがりながらも結局は彼らを生かして送り出すんだろう、そのシステムをやめないんだろう。そういう気持ちの悪さは何もこの問題に限ったことじゃない。誰かの犠牲のうえに誰かの生活が成り立っているという社会構造、そして消えていく誰かにも当たり前のように人格も感情もある、生きてる人間の機微を描いたものなんだなあと受け取った。それは彼らのような境遇の者でも変わらない。だから余計にやるせない。
キャシーとトミーがなくなったカセットテープをノーフォークで探すシーンがわくわくして好きだったな!


外国の訳本が苦手なのでここんとこちょっとチャレンジしてみてるんだけど、やっぱりいまいちのめり込めない。どうも文章のリズム、独特の言葉遣いに慣れないし(ほんとにこんな書き方なのか原本は?と疑ってしまうし、細かいとこ・微妙な感情の機微まで読み取れない)、外国の学園生活とかジョーク・雰囲気にも惹かれない。うーん。まだまだ修行が必要だなー。