LOOP/木原音瀬
- 作者: 木原音瀬,藤田貴美
- 出版社/メーカー: オークラ出版
- 発売日: 2003/10/01
- メディア: 文庫
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前半は、州脇の中にいる前世の男・宮澤が、前世で好きだったおんな・文の生まれ変わりの有田(州脇の大学の同級生)を追いかけ回す話で。ちょっとしたホラーでしたよ、有田が怖がるのもわかるよ。ストーカーの話しが通じない感じってこれかああ!とゾッとする。けっこう無茶な展開のあと、なんだかんだで宮澤が消滅(成仏?)して、そっからが現世の有田と州脇のパートになるわけですが。だんだんと惹かれていって、恋愛に陥っていく感覚と、普通の感覚、ふと我に返る感じ、前世での記憶が混入してきて狂いそうになる有田、だんだんとあんなに嫌がっていた宮澤に同化していってしまう州脇。その揺れに揺れる感情の流れが、ほんとにうまいこと描き出されてるんだよなあ。過去との交錯具合もいい。夢中で読んでしまった。
私は木原さんの、きれいごとを書かないところが好きだ。相手を好きだと思うときも、思いやりだけじゃなくて、迷いとかエゴとか勢いとかに後押しされて進む。そういうのが不思議としっくりくる。それにいっつも、超越人格の人間が一人は出てくる木原作品ですが、今回はメインの二人がどっちもはじめは(わりと;)まともだったのでそれもよかった。まともな人間が、恋に狂うからこそこんなにも恐ろしい。
そして後日談の「eternal」。有田の叔父さんと、大学の船橋教授が実は高校時代の同級生で……って話。これがまたよかったんですよ…。ほろりと。
「好きだということに、気づけないというのは不幸なことだろうか」
州脇は、廊下の隅でしがみついてくる英一の髪を優しく撫でていた。
「不幸だよ」
「どうして」
「幸せにはなれないだろう」
英一の頭の中を、過去の因縁が回る。殺した、殺された記憶。ただの記憶。
表題作へのリンク、そして次の有田(叔父)と船橋の話しへの繋ぎ方、見事です。そして「F」の最後。せつなすぎて胸がぎゅーっとなったよ。船橋はこのあと、どうなっちゃうんだろう。どうにもなりようもないか、もう中年なんだもの。気づけないことのなんとかなしいことか。いいものを読んだ。ちょっと文学作品っぽかったせいか、「こゝろ (角川文庫)」が読みたくなった。
あ、先に本編はノベルズ化されてたんですね。こっちの表紙のほうがキラキラしてるっぽいのはどういうことだ(笑)上に出した藤田貴美さん版のイラストは合ってて、州脇と有田のビジュアルが挿絵でたとたんにカッと心を持ってかれた感じがしたので私はイメージどおりでした。州脇がかっこいいんだよ。
- 作者: 木原音瀬,高宮東
- 出版社/メーカー: オークラ出版
- 発売日: 1999/03/01
- メディア: 単行本
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