陽炎/今野敏 ★★★☆

短編集。黒木がフューチャーされる「待機寮」、村雨と須田の好バランスぶりがわかるしみんなで飲んじゃったりもする「アプローチ」、待ちに待った(笑)村雨目線の「予知夢」、STシリーズの青山がゲストで出演して安積と認め合っちゃう「科学捜査」、安積班の熱い連携と信頼が見られる「トウキョウ・コネクション」などなど、全8編。うむうむ。何冊も読むうちに登場人物が身近に感じられてするする頭に入ってくるのがシリーズものの素晴らしいところ。安積班も例に漏れません。短いなりに彼らの気持ちやら苦労やらチームワークが見れてにこにこしつつ読みました。くしくも青山くんが安積の魅力を説明してくれてます。

「そんなことないよ。係長さん、すごく優秀な実践的な心理学者だよ」
「君にそう言われると悪い気はしないが……」
「常に周囲を観察していて、誰が何を考えているかを把握している。だから、あの目つきの悪い部長刑事さんも、太った部長刑事さんも係長のことを信頼しているんだ」
「彼らが信頼しているって? そうかな? 私は頼りない上司だ」
 青山は再びほほえんだ。

うん、それはいい上司ですよ、そんなことをしている上司はなかなかいない。しかも自覚がないから嫌味がない、村雨には逆に嫌われてんじゃないかとか思ってるくらいですからねえ。「そうかな?」って可愛いんですけどあづみん!!

 須田の言葉に速水が言った。
「彼らのヘマを臨海署が帳消しにしたんだからな。評価もするだろう」
 そうだ。速水、そして須田。おまえたちの手柄だ。
 そう言ってやりたかった。しかし、口には出さなかった。
 安積は彼らが誇らしく、その気持ちをじっとかみしめているのだった。