残照/今野敏 ★★★★
- 作者: 今野敏
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2002/06
- メディア: 新書
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二人の会話は40代とは思えぬほど青臭くて、だけど真摯でよいです。
「いつまで、無茶な生き方をするつもりなんだ?」
「無茶な生き方ができなくなるまでだ」
速水が冗談を言っているのではないことは、その口調でわかった。私も冗談を言うつもりはなかった。
「私はとてもおまえの真似はできない。おまえがうらやましいよ」
「偶然だな、ハンチョウ。俺もおまえに対して同じことを考えていた」
「同じこと? おまえが私のことをうらやましいと思っているという意味か?」
「思っている。おまえには仲間がいる。彼らはおまえを尊敬しているし、それは単なる尊敬じゃない」
(中略)
「なあ、ハンチョウ。俺とおまえには共通点がある。何だかわかるか?」
「二人とも警察官だ」
「そう。とびきり優秀な……」
速水は声に出して笑った。「だが、それだけじゃない」
「何だ?」
「二人とも大人になりきれないところだ」
私はその点について考えた。だが、それがどういうことなのかよくわからない。
「大人になることは、必要なのか?」
速水はこたえなかった。
「ハンチョウよ。刑事にとって、一番大切なのは何だ?」
私は考えた。
「質問したのが、おまえでなければ、こうこたえるだろう。法を守り、事実の確認をすることだ」
「質問したのは、俺だ」
「真実だ」
私はこたえた。「そして、正義だ」
速水はほほえんだ。
「ならば、真実を追究して、正義を行なおうぜ」
「なあ……」
私は尋ねた。「私たちは大人になる必要はないのだろうか」
速水はまた笑いを浮かべた。
「必要ない」
私はうなずいた。
タイトルとの絡め方も、ラストのまとめ方も、かっこよかったっす。まんぞく。また読み返したい。