残照/今野敏 ★★★★

残照 (ハルキノベルス)

残照 (ハルキノベルス)

台場で起きた少年の殺人事件、どうやら容疑者は暴走族の中で「黒い亡霊」と呼ばれるスカイラインGT−R。交機隊の速水のスープラパトカーの助けを借りて、安積は事件の真相に迫っていく……。いつもの地味さはどこへやら、カーチェイスはあるし疾走感はあるし少年のキャラも漫画のような、ある程度爽やかな一冊。頭文字Dかと思ったよ・笑。とにかく面白くて、わかりやすくて、一気に読んだ。速水があづみんのそばにいて手助けしてくれるのがうれしい。そして伝説の走り屋少年を、「仕事として」「命を賭して」車を走らせる大人な男の姿を見せることで変えてしまう速水はすこぶるかっこいいのだー。スープラの助手席であまりのスピードにぐるぐると目を回してるらしきあづみんにもモエ〜(*´◇`*)
二人の会話は40代とは思えぬほど青臭くて、だけど真摯でよいです。

「いつまで、無茶な生き方をするつもりなんだ?」
「無茶な生き方ができなくなるまでだ」
 速水が冗談を言っているのではないことは、その口調でわかった。私も冗談を言うつもりはなかった。
「私はとてもおまえの真似はできない。おまえがうらやましいよ」
「偶然だな、ハンチョウ。俺もおまえに対して同じことを考えていた」
「同じこと? おまえが私のことをうらやましいと思っているという意味か?」
「思っている。おまえには仲間がいる。彼らはおまえを尊敬しているし、それは単なる尊敬じゃない」
(中略)
「なあ、ハンチョウ。俺とおまえには共通点がある。何だかわかるか?」
「二人とも警察官だ」
「そう。とびきり優秀な……」
 速水は声に出して笑った。「だが、それだけじゃない」
「何だ?」
「二人とも大人になりきれないところだ」
 私はその点について考えた。だが、それがどういうことなのかよくわからない。
「大人になることは、必要なのか?」
 速水はこたえなかった。

「ハンチョウよ。刑事にとって、一番大切なのは何だ?」
 私は考えた。
「質問したのが、おまえでなければ、こうこたえるだろう。法を守り、事実の確認をすることだ」
「質問したのは、俺だ」
「真実だ」
 私はこたえた。「そして、正義だ」
 速水はほほえんだ。
「ならば、真実を追究して、正義を行なおうぜ」
「なあ……」
 私は尋ねた。「私たちは大人になる必要はないのだろうか」
 速水はまた笑いを浮かべた。
「必要ない」
 私はうなずいた。

タイトルとの絡め方も、ラストのまとめ方も、かっこよかったっす。まんぞく。また読み返したい。