DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件/西尾維新 ★★★★

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

原作の中で出てきたらしいロサンゼルスBB殺人事件を広げ、Lと南空ナオミと謎の探偵・竜崎の事件解明をメロの記述という方式で追ったスピンオフノベル。面白かった!竜崎と南空のやりとりとか、Lが好きな私としてはニヤニヤしつつ読んで、やっぱLはいいキャラだなあと。ここまで愛を持ってちゃんとLのおかしみを描くことができてたら、そしてメロの語りによってLの孤独と悲しみも書くことができてたら、デスノのノベライズとしてはかなりのイイ線いってるんじゃないだろうか。

「けれど、それでは、犯人に対して守りに入ってることになりませんか?(中略)」
「その心配はありません。私は攻めですから」
「攻めですか」
「はい、強気攻めです」
 竜崎は言う。
「守りに入ったことなど一度もありません。生まれてこのかた信号だって守ったことがないのが、私の数少ない自慢の一つです」
「信号は守ってください」
「嫌です」
 断られた…。

と、思って読んでたんですが。


ぎゃあああ。反則、それ反則! やられたー。この小説を手に取るのなんてほっとんどがLが好きな人たちだろうに、それを!なんてことを……私のモエを返せー!とでも言いたくなる真相です。いやまあ、小説としては見事ですよ、読者の思い込みと先入観を利用したミスリード、しかしBとLがあそこまで似通っているだなんて、思いようによっては更にかなしい…かな……いややっぱ無理あるよな。私はてっきりね、電話のLが偽者 ってオチなのかと途中までは思ってたんですよ。事件はLがBをおびき出すために仕組んだもので、実はB側の駒として南空が送り込まれたのかな、とか。だってさー竜崎があまりにも可愛いからさー。……まあでも、パズルゲーム・暗号ゲームを解いていく竜崎、というのは面白かったし、電話でのLのきっぱりとした信念もすてきでした。

「(中略)南空ナオミさん、私は、悪というものが、許せないんですよ。許せないんです。だから、知り合いだろうがなんだろうが、関係ありません。わたしが興味があるのは、正義だけですから」
「正義……だけ」
 南空は、その返事に、息を呑む。
「じゃあ……それじゃあ、Lは、正義以外は、どうでもいいというんですか?」
「そうは言いませんが、優先順位は低いです」
「悪はどんなものでも、許せないんですか?」
「そうは言いませんが、優先順位は低いです」
「でも───」
(中略)
「正義は他の何よりも、力を持っています」
「力? 力っていうのは、強さですか?」
「違います。優しさです」

最後のページの、「Lが竜崎と名乗り始めた最初の事件」「Bの最後」の描写が好きなので、してやられましたが結局★はよっつです。
ロサンゼルスBB連続殺人事件。L.A.B.B---L is After Beyond Birthday. 立派なスピンオフでした。他にも出たら読みたいな。ほんとのLの生い立ちや登場や、知りたいような謎のままにしときたいような。こんな世紀の名探偵Lと月が拮抗して対決した話だったからこそ、デスノはあんなにも面白かったんだなあ。