虚構の殺人者/今野敏 ★★★★

虚構の殺人者―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)

虚構の殺人者―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)

帰省のお供にブックオフで400円で購入。またしても面白い!(そればっか) やっぱシリーズものは初期の勢いがハンパないね。一応事件は起こってるけど、それと同じくらいの量を裂いて安積班内のことが語られている。安積と村雨の関係の、けっこうどきっとする描写もあったりして。会話も多いし。あと大橋くん(桜井と並ぶ村雨の部下)がまだいます。速水もちょこちょこ顔を出してはいいとこを持ってく。

「あの野郎……」
 安積がつぶやいた。近づいてきたのは速水だった。
「二十キロ・オーバーだ」
「俺には切符なんぞ切らんと言ってたじゃないか」
「おや、これはハンチョウ……。たまげたな。おまえさんでも法を破るのか?」
 私が乗ってると知って追って来たくせに───安積は思った。
(中略)
「事件を片付けたんでな、署で酒盛りだ」
「よし、決めた。その酒の没収だ」
「おい、刑事課を敵に回すのか?」
「そうなるかもしれん。だが、没収の量はそれほど多くなくていい。この俺が飲めるだけでいい」
「あきれたな……」
「いいか、俺が行くまで帰るな」
「どうせ、今夜は誰も帰らないよ」
「ようし、行っていい」
「おまえさん、俺が嫌いなんじゃなかったのか?」
「そう。だから、いっしょにいて、酒を少し没収してやるんだ」

いっしょにいて、酒を少し没収してやるんだ(*´∀`*)<今年の萌えセリフ第一弾

巻末の関口苑生さんの解説が的を射ていてなかなか。上の者には好かれないが下の者からはやたら慕われる、だけど心ん中は迷いや心配でいっぱい、そんな思慮深い安積警部補の人柄が心地よい。モテるわけだわ。