クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識/西尾維新 ★★★★
クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/08
- メディア: 新書
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人間不信っていうのかな? どこか致命傷的に他人を信用できないってこと。一度でも他人から迫害を受けたことのある人間は、残りの一生絶対に他人を信じられなくなるんだよ。
そりゃ言い過ぎだと思うけど。
思ってないね。
思ってるさ。
思ってないね。
思ってないけどね。
人間が差別することを大好きだってことを知ってる人は他人なんて信用しないんだよ。
素直に感情を曝け出し、
笑い、
怒り、
ときに悲しみの表情を涙とともに浮かべ、
それでも最後には楽しそうな笑顔に戻り。
それは、
周りにいただけのぼくすらも、
この、
欠陥商品のぼくをすらも。
「…………」
あるいは彼女はこのとき、既に覚悟を決めていたのかもしれない。彼女を救えなかった、否、圧倒的に救わなかったぼくが言ってもそれは言い訳に過ぎない戯言だろうが、しかしそれでもそう思う。
葵井巫女子は自分の命運を認めていたのではなかったか、と。
これがあるから最後の一文、一語が効いてくる。巫女子やむいみは人間らしかった。明るくて友達がいて豊かな感情があって。戯言使いはそういった情がない欠陥品で自分をどうしようもないと思ってる。だけど人間はその情によって、欲によって嫉妬によって人を殺すわけで。どうしようもない。戯言使いは、そうやって周りを自分の都合どおりにしようとする人間を、憎悪する。そんな「人間らしい」はずの人たちの暴挙・振るまいに嫌気がさすような経験をしてきたのかもしれないねー(過去はシリーズが進めば明かされるのか?)。だから、ただ何の理由もなく情に根ざす訳もなく無差別殺人をくり返す人識のことは見逃して、友達を自分の都合のために殺した彼女たちのことは許さない。そういう身も蓋もない構図。めちゃくちゃなようでいて皮肉ってて、悪趣味といえば悪趣味。だけど人と人との関係で、どうしてそうなるのかってことが、不思議で不思議で不思議なことっていっぱいあったからちょっとだけ納得してしまったりもする。のがこわいところ。