蟹工船/小林多喜二 ★★★

小林多喜二 蟹工船

小林多喜二 蟹工船

青空文庫にて、第3弾。読みにくい。とにかく読みにくいー。漁夫・雑夫のなかに主人公とか名前のある登場人物とかがいないし、文体がうまくないから誰が何を言って何をしてるかがわかんない。んでも我慢して読んでくと、さすがに虐げられ搾取される労働者の表現はうっとくるものがある。

彼等は寝れずにいるとき、フト、「よく、まだ生きているな……」と自分で自分の生身の身体にささやきかえすことがある。よく、まだ生きている。――そう自分の身体に!

「国道開たく」「鉄道敷設」の土工部屋では、虱(しらみ)より無雑作に土方がタタき殺された。虐使に堪えられなくて逃亡する。それが捕まると、棒杭にしばりつけて置いて、馬の後足で蹴らせたり、裏庭で土佐犬に噛み殺させたりする。それを、しかも皆の目の前でやってみせるのだ。肋骨が胸の中で折れるボクッとこもった音をきいて、「人間でない」土方さえ思わず顔を抑えるものがいた。気絶をすれば、水をかけて生かし、それを何度も何度も繰りかえした。終いには風呂敷包みのように、土佐犬の強靱な首で振り廻わされて死ぬ。ぐったり広場の隅に投げ出されて、放って置かれてからも、身体の何処かが、ピクピクと動いていた。焼火箸(やけひばし)をいきなり尻にあてることや、六角棒で腰が立たなくなる程なぐりつけることは「毎日」だった。

薄暗く、ジメジメしている棚に立っていると、すぐモゾモゾと何十匹もの蚤が脛(すね)を這い上ってきた。終いには、自分の体の何処かが腐ってでもいないのか、と思った。蛆(うじ)や蠅に取りつかれている腐爛(ふらん)した「死体」ではないか、そんな不気味さを感じた。

はああ。ゆううつ。ラストだけちょっと不屈な感じで元気よく終わってるけども。「ワイルド・ソウル」(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20040130#p1)を思い出す。

http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080719#1216441667だけど、これをどういうふうにドラマCD化するんだろう。山下耕介って名前はいかにも漁夫にいそうでナイスネーミング。山下がストライキを扇動する賢い学生上がりかな、石田さんはどもりの役だろうか、それとも途中で死んじゃう役か。読むより聞くほうが(ちゃんと工夫されているのなら)もしかしたらわかりやすいかもしれない…? 半BLレーベル?から出るので一応それっぽい場面もあるにはあります。っていうかココと、友達同士二人で会話するとこくらいだけどね。

十四、五の雑夫に漁夫が何か云っているのだった。何を話しているのかは分らなかった。後向きになっている雑夫は、時々イヤ、イヤをしている子供のように、すねているように、向きをかえていた。それにつれて、漁夫もその通り向きをかえた。それが少しの間続いた。漁夫は思わず(そんな風だった)高い声を出した。が、すぐ低く、早口に何か云った。と、いきなり雑夫を抱きすくめてしまった。喧嘩だナ、と思った。着物で口を抑えられた「むふ、むふ……」という息声だけが、一寸(ちょっと)の間聞えていた。然し、そのまま動かなくなった。――その瞬間だった。柔かい靄の中に、雑夫の二本の足がローソクのように浮かんだ。下半分が、すっかり裸になってしまっている。それから雑夫はそのまま蹲(しゃが)んだ。と、その上に、漁夫が蟇(がま)のように覆いかぶさった。それだけが「眼の前」で、短かい――グッと咽喉(のど)につかえる瞬間に行われた。見ていた漁夫は、思わず眼をそらした。酔わされたような、撲(な)ぐられたような興奮をワクワクと感じた。

それにしてもむずかしい文体…のれない……。
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