私は貝になりたい


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私は貝になりたい - Wikipedia

観てまいりました。これでやっと人様の感想が読める…。その昔「海底の石になりたい」とリアルで言ってファンの度肝を抜いた中居さんが、豊松を演ってどう思ったのか、いろいろな記事を改めて読みたいと思います。宣伝録画分も見なきゃ!なんせ403媒体(!)も番宣してるんだもんね。→中居、感激ゴール…超ハードキャンペーン(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース どんなけだよ!その貝あって、違うよ、その甲斐あって好スタートみたいでよかったです。私の行った映画館も、いつもガラガラなくせに今回は大入りでしたよ。平日昼間、ご年配の方が多かったかな。



というわけでとりとめもない感想。




  • あー…ラストの豊松の身投げっぷり・心の折れっぷりがすごかったですね。それだけ絶望したってことなんだろうな。減刑になったと思って、お仲間にも泣いて喜んでもらって、行ったら絞首刑。そりゃ魂も抜けるよ、教海師小宮の前でガクッと首を後ろに垂れて虚空を見つめていた豊松の顔がおそろしかったよ…。中居豊松は、ヒーローでもなく特別強くもない、普通の男で、だけどちゃんとちょっと頑張ったりできる人で、いい意味で普通のひと像としてよかったと思う。前半で、そういう男気のある部分がちゃんと(放浪の果てにここで床屋やろう!と言い出せたり、仲間の兵を助けたり)描写されていたので感情移入しやすかったです。そんな庶民が、魂の根までぐしゃぐしゃに潰されて、「戦争も、徴兵もない、妻子を心配することもない、貝になりたい」「生まれ変わるとしても人間なんかいやだ、牛や馬がいい、貝がいい」とまで思ってしまうってのはもう…。だってさ、房江さんが営む床屋さんは先々厳しいことが明示されてるじゃないですか。「豊松が帰ってきたら」ライバル店ができても大丈夫さ、と。つまり房江さんと子供たちだけじゃ先細りなわけですよ。そんな房江さんのもとにあの貝になりたい手紙が届いたらどうよ。もう死亡しかないよ。奥さんもかなりの絶望だよ。だけど希望を絶たれた豊松には、残されるだろう妻をいい言葉で励ますことも、かっこよく辞世の言葉を贈ることもしなかったんだよ。ただ自分の無念を、自分の気持ちを、鬼の顔で書き殴って死んだんだよ。潔くも美しくも正しくもない、どろどろしい。それは、刑場の階段をぐだぐだで登るシーンでもこれでもかと突きつけられる。そんな普通の庶民・豊松のあり方・死に方が強く印象に残る映画でした。戦争は、人間を壊してしまう。大政の前では、個人は無力だ。それでもやっぱり、死ぬときには指でもう会えない写真の家族を辿って笑うんだよ…ひどいよ……。
  • なんであそこで豊松が結局絞首刑執行されたのか、その時代に何があったのか、そういう情勢を描いていればまた違ったテーマの映画になったんだろうと思う。私は戦争を実際には知らないし、あの時代の人たちが赤紙が来て召集されるときに「おめでとう」って言う感じもわからない、「名誉の戦死」も心の底から理解できない。みんな薄々は間違ってるって気づいてたのか、本気で天皇万歳って思ってたのか。例えばいま日本で徴兵されたとして、現代の若者は国を・家族を守るためにでも戦争に行くだろうか。あるいはちゃんと、断われるだろうか……。貝になりたくならないようにするには、どうしたらいいのかなあ。それにしてもこのタイトルは秀逸ですね…。
  • ちょっとはおちゃらけたとこも。剛の出番。連行されるとき、「オオニシさんどんなけ人気者だよ!あんた外地で(あるいは刑務所で)なにしてたの!」と思ったです(笑)。豊松に何の事件で?と訊かれたときの、オオニシさんの目の演技はすごかったね。鬼気迫るものがあった。そしてMVPは白人の看守さんのぷるぷる震えてた顎に差し上げます。あのアメリカンお茶目すぎでしょ!

私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び 私は貝になりたい (朝日文庫)