彼女について/よしもとばなな ★★★

ばななさんにありそうでなかった初のパターン。オカルトを題材に使うことが多いなら、こういうオチもとっくにきていても良さそうなものなんだけれど。タイトルの「彼女」は結局誰のことだったのかなあ。主人公由美子の母のことでもあり、母の双子の妹のことでもあり、由美子自身のことでもあるんだろうか。わけもわからず命を奪われたすべての子に対してかもしれない。

「(略)体の動かし方やお話の順番や目線やそういうものをよく見ていれば、驚くほどいろいろなことがわかります。ただし、自分の考えを入れないで見るのが大事なのよね。人はほとんどのものを自分の考えだけで見ているから。」
 隅さんは言った。
「人は、なんでもできるの。忘れないで。今、あなたがここにいることだってとんでもない、ありえないはずのことなのよ。でも、人はなんでも可能にする。つながりのある他の人の力を借りたりして、実現させる。ただ、説明のしかたがあれこれあるだけで、同じことなのよ。(略)」

あちこちを訪ね歩く前半も楽しめたので面白かった。