美しいこと(下)/木原音瀬

(上)の感想→http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20090421#1240319990

 ふと胸を過ぎる疑問。自分は顔だけを好きになったんじゃない。人形のような美しさだけに惹かれたわけでもない。顔ではないというのなら、心に惹かれたというのなら、同一人物の松岡を恋愛対象として捕らえられないのはどうしてなんだろう。…答えはもう何十回も繰り返した場所に辿り着く。…松岡が男だというところに。

寛末→松岡に好きかもしれないから付き合って、って引き止めがあって松岡が泣き崩れるところまでで「美しいこと」は終了。男同士の壁を寛末は乗り越えられないかもしれないって示唆が前提だからもうせつないわ苦しいわ。
そして続編の「愛しいこと」は寛末目線。友達としては好きだけど恋人としては見れない、男の体に欲情できない、などなどのBLの定説コースを描きながらどれもすごく現実的で、心理描写が細かくて、素晴らしかったっす。扉絵でネタバレしてるから今回はあんまり怖くなかったけど、それでも寛末が最後の最後の方で徐々に振り向いてきたときは、はあ〜よかったあ〜!と胸が震えた。途中の寛末の朴訥&恋愛音痴ゆえの無神経ぶりとか残酷さとかが本当グサグサ突き刺さって、でも「美しいこと」の方で相手のそんな部分こそが好きな松岡の心情も理解できてるからこそ余計にジリジリする。どうなることかと思ったから、最後まで読んだら結末部分は今までで一番ちゃんとBLしてたような気がしますよ。だからこの本は評判がいいのかな。寛末が落っこちてきたとき、ヨッシャーー遅ぇんだよーーー!てなったもんね。感情移入もできてたってことだよね。2人が一緒にいて楽しそうなとこの描写、会話が可愛いんだもの。ほんと、ハッピーエンドでよかった。やっと気持ちが通じて松岡がわんわん泣いたとこではこっちまで泣きそうになっちゃったよ…。

「気になるからってやってみて、それでどうするんだよっ。気持ち悪かったら、やっぱり違ってた、いらないってまた俺のこと放り出すのかよっ」
 丸められた背中が、小刻みに震えた。
「そんなことしないから」
 嘘つけっ、と松岡は振り返った。
「ずっとそうだったじゃないか。俺は諦めようとしているのに、好きかもしれないって期待させて…それでやっぱり駄目って言うんだ。男だから駄目だって言うんだ。俺はマゾじゃない。三回も同じ奴に振られるなんて絶対嫌だ」
 興奮した松岡は、鼻の頭と頬が赤かった。両目も潤んで、目尻には光るものが滲む。こんなぐちゃぐちゃで、感情もあらわな顔は見たことがない。どうしてこんな顔をしているんだろうと思い、そうさせたのは自分だと気づいた。
 他人事のように可哀想だと思った。そして愛しいと思った。

「愛すること」って全プレの続編があったらしい…!探して読もーと思ったけど奥とかでも超高いわあ;; CDも続編の「愛しいこと」が5月に出るんだよね。この寛末はかなり杉田くんで聴いてみたい!買おうかな…