吸血鬼と愉快な仲間たち Vol.2


「あぁ、悪い。気に障ったのなら謝る。犬猫はものの例えだ。恋愛対象になりそうもないものなら、何でもいいんだ。バッタでも石ころでも」
 謝ってはいるけど、例えが余計に酷くなっている。暁の言わんとするところはわかるけど、もっと相手の気持ちを思いやれないものだろうか。本当にそう思っていたとしても口に出さない方がいい言葉がある。(中略)
「とにかく、お前は俺にとって性的な意味においては、そこの電柱…」
 聞いている方が居たたまれなくなり、思わず物陰から飛び出してしまった。
「むろいごめんなさい あきらは かんがえがあさい」
 いきなり姿を現してきたアルに、二人とも目を丸くして驚いていた。
「どうしてお前がここにいるんだっ」
 苛立った口調で暁が吐き捨てる。
「おそいから さがしにきて ぬすみぎきした」
「盗み聞きだとっ」
 暁の目つきが余計に険しくなる。
「それはいい あきら おもいやりがない」
 これだけは暁に言ってわからせてあげないといけない。こっちの方が盗み聞きよりも罪は重い。
「にんげん いぬ ねこ どうぶつとちがう ひどい」

1冊目感想→http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20070510#1178805429
地味だけどやっぱり面白い!エンバーマー・暁のブレることないツンデレ&変人っぷり、半吸血鬼(で昼は蝙蝠、夜は人間)のアルの健気さ&カタコト。二人の言い合いはナイスコンビネーションで思わずぷぷっとふき出してしまいます。上に引用した室井を振る暁をいさめるアルとかかなりいい!笑ったー。木原さんってこういうおかしみもうまいんだなって改めて思います。今回はアルがモデルをしたりドラマに出たりと芸能界進出、暁に惚れる後輩がいたり過去がちょっとだけ出てきたり。ちょこーっとずつ話が進んでいってます、恐ろしいくらいに牛歩ですが。とうとうアルが暁の恋人に立候補したけどやっぱりどっかズレてて、このまますんなりはいきそうにない感じ。BLを読んでるというのに実は色恋抜きで慕ってる描写のほうが好きだったりするから、ゆっくりでいいです。今回もアルがスプラッターな場面があったので、どうあっても入れるつもりなのだな、と笑ってしまいました。暁が似ている海外で有名な女優の伏線や、不感症の件もあるし、先が楽しみ。暁のかたくなな心を、アルのまっすぐさが溶かしてゆく展開になるのかな………いや、ならないかな(笑)。

「どうして あいが ほしくないの」
「お前だって、服を着る時は好きなやつを選ぶだろ。気に入ってるとか、着心地がいいとか。そういうもんじゃないのか。一度着た服は、返品はできない。だから俺は相手を受け入れない。責任を持てないことは最初からしないことにしてるんだよ」
 それに、と暁は続けた。
「責任を持とうとまで思う奴は、いないからな」
「ぼくは?」
 アルは思わず聞いてしまった。
「ぼくは どうなの?」
 室井に対しては完全シャットアウトだった暁が、初めて黙り込んだ。
「ぼくのこと あきらは どうおもっているの」
「勝手に人の家にしのびこんで、成り行きで住み着いてる居候だろ」
「ぼくのこと あいしてないの?」
 喋っているうちに、感情がブワッと高ぶってきて、アルはぽろぽろと涙をこぼした。死んで吸血鬼になっても、涙がこぼれる。感情と一緒に流れ出す。
「ぼくは あきらのこと だいすきなのに あきらはぼくのこと すきじゃないの」
 暁が困っている。困りきった顔で、まっすぐに見つめるアルから視線を逸らした。
「ずっとひとりぼっちで さびしかった だれにも あいてにしてもらえなくて さびしかった あきらとくらせて ぼくはうれしい」
 暁は頭をガリガリと掻いて、何度も舌打ちした。

CDにもなってますねー。ちょっと試聴した限り、アルのカタコトの破壊力が予想以上に大きかった…もっと静かにカタコトかと思ってたらけっこう騒がしいw

アル:平川 大輔、高塚暁:緑川 光、怱滑谷:森川 智之、津野:遊佐 浩二
http://www.animate.tv/pv/detail.php?id=pcd090312i