NOW HERE/木原音瀬

遊び人のゲイで30歳の営業マン・福山 × 50歳にして童貞(むしろ妖精?!)のしょぼい経理部長・仁賀奈。本物オヤジ受もの。木原作品ではデブ受も女装受もよかったので心配はしてなかったんですが、案の定遊びのつもりが冴えないオッサンにぐいぐいハマってってしまう高慢ちきな福山の様子にざまあみろと思うやら同情するやらでぐいぐい読み進めちゃいました。どうでもいいけど福山って名前が雅治を連想させるよね。わざと?(笑) 福山も仁賀奈もそれぞれ、なんだよこいつ!と思う部分もあれば、かわいいとこや一緒にせつなく共感できる部分もあって、人間くさくていいです。うまい。後半、仁賀奈が振り向いてくれるとこまでの仁賀奈の心情の変化をこそ視点を変えて詳しく読みたいなーと思ったです。美しいこと→愛することみたいに。最後、急に外部視点になってびっくりしたけど、そのゲイバーオーナーのレヴィちゃんから見た感想が面白かった&萌えたのでこんな終わり方もありかなっと。ラブラブになったあとの二人を想像すると微笑ましい。結局福山は遊んでたけど全然子供だったってことですよね。

「このままでもいいかと思ってたんです。福山さんが飽きるまで、体だけでよければお付き合いしようと。けど駄目です。私が福山さんに許したのは体だけで、心は違う。心まで偽ることはできません」
 福山の前で、仁賀奈は両手を床につき土下座した。
「どうか私と別れてください、お願いします。(中略)」
 顔を上げた男の目は、狂おしいほど必死だった。
「お願いします、お願いします」
 別れると言わないので、涙目のまま何度も何度も土下座する。仁賀奈が懇願すれば懇願するほど、言葉は福山を切り裂き、ボロボロにして、再起不能になるまで叩きのめす。
 好かれていない。仁賀奈の心のどこにも引っかかる場所がないから、食い下がることもできない。福山の前にはただ、絶望的な恋の終わりが横たわっていた。