無罪世界/木原音瀬

詐欺まがいの仕事、賭けごとで借金まみれの人生。そんな山村に顔も覚えていない親戚の遺産の話が転がり込んできた。浮かれた山村だったが、その遺産には厳しい条件がついていた。幼い頃さらわれて以来、ジャングルで育った従兄弟・宏国の世話をするというものだ。自分の「むら」しか知らず、日本語も解さない宏国と暮らさざるを得なくなり、いざとなったら放り出す気で引き受けた山村だったが…。

面白いんだけど物足りない!ラブはどこー。設定は相変わらずファンタジーで、山村と宏国のキャラもよくわかって、最後はちゃんとそれっぽくなってただけに余計にジリジリするわ。そっから先こそが読みたいんだー!てとこで終わってるのです。山村の変わろうとしたきっかけや気持ち、物語の流れはすごくよかった、だから、これは非人道だった山村の成長物語なんだと思う。あ、宏のクールな野生っぷりもよかったなー。ラストで戻ってきてくれたときには、おまえを攻に認定する!と思った。なのでいずれリバって、沖縄では宏×山村で暮らしてるといいw

「お前、どうして蛍を殺したんだよ。いくら明かりが欲しかったからって、あんなの可哀想だろ」
 宏国は首を傾げる。その顔には罪悪感のようなものは微塵も感じられなかった。
「くらい こまる」
「暗くて困ったって、一時のことだろ。待ってりゃ明かりはついたんだ」
「つき ない よる ほたる あかり」
 ……宏国が住んでいたジャングルでは、蛍を潰して明かりにするのは、日常茶飯事だったのかもしれない。それはわかる、わかるがここは日本で、残酷なことをしなくたって明かりはつく。だから山村は納得したくなかった。それがたとえ自分のためだったとしても。
 宏国は蛍を「そら おちる ほし」と言っていた。そんな詩的な例えをしながらも、躊躇いもなく潰すのだ。