あいの、うた -The end of youth-/木原音瀬

音楽業界での2つのカプリングを収録。表題作は、音楽エディターでゲイ・小菅 × いまいち売れないバンドのボーカル・久保山。これは久保山のまっすぐな性格に救われて、いいビーエルでした。全っ然好みじゃない、むしろ気に入らなかったバンドのボーカルを好きになっちゃうきっかけが彼のつくった歌だったってのが、正当な音楽ものっぽいよね。そこ読んで、よっしゃー!となりました。

「しょうがねえなあ」
 横柄な態度だったが、それもなぜか照れ隠しのように見えた。薄ら寒い、車もまばらな歩道を並んで歩きながら、小菅はここ数時間、頬の痛みも井上のこともすっかり忘れていた自分に気がついた。
「お前さあ…」
 久保山は煙草を挟んだ右手を軽く振った。煙が揺れる。
「嫌なら嫌って言えよな」
「あ、うん…」
「終電なくなる前にだぞ」
 歩きながら、胸が詰まった。意味もなく泣けてくる。隣を歩く男が、自分より背が低くて短気な男が、大きく大きく見えた。しゃくりあげたことで、久保山が振り向いた。…驚いた顔をしていた。
「なに泣いてんだよ」
「俺、ゲイだから」
「だからなんだよ」

2つめ、「The end of youth」。高校時代めちゃくちゃ田頭にまとわりついていた詩人志望・小日向力 × 昔アイドルバンドで売れたけど今は落ち目で苦しむ田頭(「あいの、うた」では小菅の勤め先の編集長)。漫画で読んだときにいまいちピンとこなかったんで一番最後になっちゃったけど、原作だと詳しく書かれててわかりやすかったな。力のおそろしいまでのまっすぐっぷりと懐き方は木原さんっぽい。最後、ひっついたのはいいんだけど田頭が全然成長してないように思えるんだよなーうーん。




木原音瀬 作品リスト&感想リンク(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080618#1213796208)もそろそろ更新しておきます。