サイコロジカル(上)─兎吊木垓輔の戯言殺し/西尾維新 ★★★☆

戯言シリーズ4作目、の上巻。読み終わって、さすがに「長っげえーよ!」とツッコんだ。もうとにかく、事件が起こるまでに理屈や心情をこねくり回して延々延々説法を聞かされてるようなそんな感じで、だけど読んでる間は退屈じゃないという。だからこれは結局、物凄いネガティブレベルで色々言って逃げてるいーたんが、玖渚友との過去や抱えてる気持ちをちゃんと消化して向き合うようになれるまでの物語、なのかな。主人公が戯言遣いで、周りが天才ばっかりで、まともな人があんまりいないからややこしいことになっちゃってるけど。いーたんどうするんだろうか…。
他がぶっ飛びすぎてるせいか、卿壱郎博士の過去の玖渚とのエピソードが凡庸だった。前回の哀川潤同様、今回は鈴無音々がばしっと説教してくれるとこでちょっとスカッとする。新キャラでは大垣志人がかわいくて好きです、わりとまともだし。続きも読もうっと。

「──笑えるよ」
 僕は諧謔的にそう呟き、少しも笑わない。
 玖渚友を所有する気分を兎吊木は問うた。
 玖渚友の隣にいる気分を卿壱郎博士は問うた。
 勿論そんなもの、ぼくに答えられるはずもない。ぼくは玖渚を所有してなんかいないし、玖渚の隣にいたことなどないのだから。
 結局のところこのぼくにも兎吊木垓輔(グリーングリーングリーン)同様、綾南豹(チーター)同様、日中涼(ダブルフリック)同様、他の《チーム》の連中同様に──玖渚友によって保有されているだけなのだから。
 所有されているのはぼくの方だ。
 その所有のされ方が、兎吊木達とは違うというだけで。その所有のされ方が、兎吊木達よりもずっとえげつないという、ただそれだけのことで。
「─………」
 所有されているものが、所有者と並んで歩くことなどできるものか。