俎上の鯉は二度跳ねる/水城せとな

 

前作:窮鼠は〜の感想→ http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20070316#1215000039
携帯モバフラ連載の途中までの感想→ http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20081207#1228666327
はあああ。まとめて読むとすごい破壊力です。修羅場につぐ修羅場。ほとんどが禅問答のような恭一と今ヶ瀬のこれでもかこれでもかっていう対話で埋め尽くされてて読み応え抜群。単行本で読むと恭一の辛さが身に染みて、梟での別れのシーンでは不覚にも泣いてしまいました。私はこう見えてBLで泣くことなんてあんまりないんですけど、これはもう…!!はあああ。
後半は今ヶ瀬が別れのダメージ(恭一の名前を思い出せなくなるとか相当ヤバイだろ!)のせいか支離滅裂のぐちゃぐちゃで、可哀相になるくらい。流され侍から多少は成長した、もしくは諦めて悟りを開いた恭一が男らしくびしーっと「俺とやってく気がないのか!!」とどやしつけたとこでは今ヶ瀬と一緒になってドキューンとしちゃったよ。明るく前向きにびーえるしてる本もいいけど、こうやってぐるぐる深刻に考えてドロドロになってる本もいいもんです。そんなけ本気の相手、ということで逃れられない恋愛と自意識の怖さも出ているし。終盤で、「窮鼠は〜」に出てきたドブの話が「今ヶ瀬 ドブに溺れたくないのはお前のほうだろ」って一回りして戻ってくるところもさすがでした。もうどうやったって離れられないんだからゴチャゴチャ揉めてまわりに迷惑かけるよか、おとなしく一緒になってとっとと幸せになればいいと思う!

「──今ヶ瀬 真面目に訊くけど
 お前 俺に何を望んでるわけ」
「安心して穏やかに暮らせる未来か?
 それとも
 刹那的に貪れる目先の快楽なのか?」

「両方… ……」
「両方… …… なくてもいい… ……………」
「俺は
 貴方との絆が欲しい」
「俺には貴方がいるって思いたい
 でも100じゃなくていいんです ゼロでなければそれでいい……! それだけなんです」

恋愛の業を情念、身勝手さ、肉欲、愛着、あらゆる角度からねっとりと描いた素晴らしい作品でした。ところどころ考え方が女性ならではって気もするけど…。途中で攻守交替&自由自在になったのも私的には超嬉しい誤算で。せっかく男同士、入れ替えてもどっちの立場もイケるというのが男女とは違う描き方をできる部分なんだから、リバ万歳、もっと増えてもいいと思うの。最後まで読めて幸せだった。終わり方がまた味のある、単なるハッピーじゃないのもこの二人らしい。
あとは、BLCDのほうも続編を希望!です!!