大人は愛を語れない/崎谷はるひ


舞台役者志望の大学生湯田直海は、ある夜、地上げ屋に暴行を受けアパートから追い出され、ゴミステーションで倒れていたところを居酒屋「韋駄天」の店長・宮本元に拾われる。住む場所を失った直海は「韋駄天」で居候することに。片意地を張り続けた自分を甘えさせてくれる宮本に次第に惹かれる直海。しかし宮本は飄々として掴みどころがなく…。

これ、好きです。受の直海がちゃんと頑張ってるし、頑張りすぎてるところをいい具合に諦めた大人な宮本がさりげなく包んでくれて、直海が宮本を好きになっちゃうのもわかる。若さゆえのダメダメなところもちゃんと出てる。宮本の過去を聞いたときにはなんだそりゃー!オンナ関係でかよ!!でしたが、最終的にはそこもかえって宮本の純粋さを表していてよかったのかも…?とにかく、意地っ張りなのに宮本の前でだけやたら泣き虫な直海が可愛くて。すごく好きで、けど相手は絶対に自分を振り向いてくれないだろう、というのは肌でわかるもので、そんな直海の思いと行動が愛おしい一冊でした。宮本も実は、拾ってきた直海が泣きながらうまいうまいと自分の作ったごはん食べてくれたとこで既に好きになってたのかもなあ、なんて思いつつ。そろそろBL界(※JUNE界ではありません)でも最後どうしたって引っ付かない結末の話が流行ってもいいと思うんだけど…そういうジャンルじゃないから無理でしょうか。漫画ではちらほらありますけどね。
私の好きだった既刊「絵になる大人になれなくても」(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20060831#1209052829)の井原が、10年後の直海と同じ劇団員らしくて、後半ちょっとだけとおまけ短編に出てきてます。「大人」と「断絶していた数年間」が共通のテーマでありキーワードである作品で、いい年した大人としては読みやすいです。脇カプとして、韋駄天のマスターバイト・中垣×直海の友人・律が更に「その指さえも」として出てるんですね。あとは直海の同僚劇団員で下ネタ大王の星川も気になるなあ。相手は劇団脚本家の和田とかどうだろう。辞めてマネージャーになった元劇団員・高瀬は、先輩劇団員の吾妻とカプだったりするんだろーか。と妄想は広がります。居酒屋「韋駄天」シリーズを受けて劇団「ラジオゾンデ」シリーズになればいいなー。なんという総ホモ(笑)ってことにはなりますが。