傷物語/西尾維新 ★★★★

高2→高3の春休みに羽川翼と知り合い、吸血鬼に遭遇した阿良々木さんの「こよみヴァンプ」。化物語に続いて刊行された、けれど時系列順には遡った形になる、すべての怪異の始まりの物語です。面白かったー。アニメを先に見てるんで、キャラのイメージも動きも声もばっちりで、脳内で暦のツッコミを自動的に神谷声が読み上げてくれます。それに、これを読むと羽川かわいいなーってなる。二人のやりとりもかなりズレてて可笑しいし。パンツ見たり、胸揉ませろって言ってみたり、友達になってくださいってお願いしたり。全体的に暦がひどいはずなのに憎めない。こんなけ羽川(の主にパンツ)に世話になってたら、暦は頭が上がらないのも無理ない。メインの怪異の方も、こうして忍ちゃんはああいうふうになったのかーっていうのが知れて満足。冒頭の、並外れた優しさゆえに吸血鬼を助けた暦と、ヴァンパイアハンター3人との戦いを経ての結末、暦の後悔、決着のつけ方、一連の流れが一貫していて、一冊分でまとまっている。最後の決めセリフとかかっこよかったし…!暦のくせに!ハズしてるようでいて王道をちゃんと踏襲している、文章も表現もうまいです、導入と着地もちゃんとしててかなり楽しく読めました!これもアニメ化…できるかな…ギリかな…見てみたいです。次は偽物語を読むー。

 さすがに顔を赤くして恥ずかしそうにしながら。
 羽川は小さく丸めたその下着を僕に差し出した。
学園異能バトルのクライマックス直前のシーン風に言うなら、だけど」
 羽川はそのまま、はにかんで言う。
「貸してあげる。新学期に会ったとき、返してね」
「……いやいや。お前が最初に買ってきてくれた漫画にそんなシーンは確かにあったけれど、確かそのとき使用されたアイテムはヒロインがしていたネックレスだった」
「私、ネックレスなんてしてないし」
 羽川はもじもじとスカートを押さえて、言う。
「阿良々木くん、パンツが好きなんでしょう?」
「…………!」
 否定はしない!
 否定はしないよ?!
(略)
「え、えっと」
「あ、でもいらないんだったら」
「いやいらないとは言ってないよ。いるとかいらないとかそういう話をしているわけじゃないだろ。うんうん。えっとなんだっけ、それを新学期に会ったときに返せばいいんだっけ?」
 女性用下着は脱ぐとこんなに小さくまとまるものなのかと軽い驚きを覚えながら、なすすべもなく、僕はその布を受け取った。
 柔らかなぬくもりが、手の内に広がる。
「……悪い。これは返せない」
「は、はあ?」
「て言うか絶対に返さない。これは家宝として阿良々木家の子々孫々まで受け継いでいく」
「それはやめて欲しいな!」
「このパンツはお前の肉体から永遠に失われた」
「なんて勝手なことを!」
「パンツは返さないけれど、その代わり」
 僕は言う。
 精一杯、見得を切って。
「恩は絶対に返す。羽川にとって必要なときに、たとえ何もできなくたって、僕は絶対にそこにいる──お前に恩返しをすることが、今日から僕の生き甲斐だ」
「いいからパンツを返しなさい」
 いくら格好いいことを言っても無駄だった。

真面目に何言ってんだ。おばかすぎるw