グラスハート/若木未生


再読。シリーズ1作目です。1993年(17年前)の刊行…!ということは前に読んだのは中学生の頃か。
朱音が前のバンドを首になり、藤谷バンドに勧誘→いきなり作曲騒動に巻き込まれ→先生のバンド活動に難色を示す事務所側を説得するためいきなりの野外ライブ。ジュニア小説感がすごく出てます。人物の紹介的場面転換もうまいし。若さいっぱい。こうして読むと初めっから坂本ルートだったんだなって納得。

「(略)インディーズで一からやる苦労とか、認められないつらさとか、食べられないくらいの貧乏とか……わかれって言われても俺は絶対わかんない。今になってから、要らない苦労、わざとやったって、プロの音楽でアマチュアの世界かきまわして何が嬉しいのって感じだし。だから、『ロック』とか『バンド』ってのがもしも、そういう苦労を一緒につみかさねてつくっていくもんなんだったら、俺はそういうのはわかんないんだ」
「…………」
 聞く人によっては、今の藤谷さんのセリフ聞かされたらすごい嫌味に思うんだろうなってのは、私にもわかる。
 アマチュアとじゃ勝負できないみたいなこと、サラッと言っちゃうところとか。
 インディーズでいることにプライド持ってる人たちとかだったら、きっと怒る。
「けど、最後には、聴いてる人に届くのは、ステージで鳴ってる音だけなんだよ。……最後の、その時に、俺が『バンド』をやる意味の、答えがあるんだ。絶対にそこに、あるんだ」
 あたしに向かってなのか、自分自身になのか、それとも別のどこかになのか、藤谷さんは足元見つめながらそう言っていた。